(緊急声明)国立大学の運営費交付金「評価配分枠」の
即時撤廃を求めます
――政府・財務省は、これ以上大学を壊すな――
2018年12月27日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
本年11月20日、財務省の財政制度等審議会は「平成31年度予算の編成等に関する建議」の中で「評価に基づいて配分する額を運営費交付金のまずは10%程度、1,000億円程度にまで拡大する」との提案を行い*1 、12月21日にそのまま政府予算案として閣議決定されました。このような「評価に基づく予算の傾斜配分」は、研究の「生産性」の名の下に国立大学の教育・研究基盤を壊すものであり、国会審議の中で速やかに撤廃されることを求めます。
運営費交付金は国立大学の教育研究費や人件費などの基盤的経費として国から支払われるものであり、国立大学の自由な教育研究を支える最も大切な資金です。しかし2004年に国立大学が法人化されて以降、運営費交付金は約1,400億円も減少しています *2。その結果、各地の大学では退職教員の後任が採用できず授業を開講できない、壊れた設備が修理できない、実験に必要な道具が買えずに授業ができないなど、研究だけでなく教育にまで深刻な影響が生じています*3 。とりわけ、規模の小さな地方国立大学への打撃は深刻です。
さらに近年、政府は運営費交付金を減らすだけでなく、「評価配分枠」の仕組みを設けました。これは、各国立大学に配分するはずの運営費交付金から一定額を取り上げ、改革などに「実績」を挙げたと評価された国立大へ重点的に傾斜配分するという「選択と集中」の仕組みです(2018年度は約300億円)。しかしこの仕組みは大学の教育・研究をかえって阻害しています。
なぜなら各大学は「実績」を挙げるために短期間で達成できるような教育・研究にばかり力を入れるようになるからです。そして教職員は見栄えのよい説明資料の作成に時間と労力を割かれ、教育・研究のための時間が奪われています。
また、ひとたび「評価配分枠」で多めに交付金を受け取っても翌年はどうなるか全くわかりません。各大学では中長期の予算の見通しがつかないため、若手研究者や事務職員の非正規雇用化が進んでいます。したがって「評価配分枠」という傾斜配分のやり方は、中長期的な視点で計画・実施されるべき教育・研究の基盤を破壊していきます。
また、国立大学協会も声明等で指摘しているように *4、財務省が財政制度等審議会に提出した資料では*5 、データの根拠が不明確であったり、データの使い方が恣意的・不適切と思われる点が複数存在しており、審議資料としては「落第」といわざるを得ません。このような資料をもとに策定された建議に基づく政府予算案の国立大学法人運営費交付金の「評価配分」部分は撤廃し、基盤的経費として措置しなくてはなりません。
このまま運営費交付金の配分にあたり「評価配分」方式が拡大していけば、地方の小規模な国立大学を中心として、存立に関わる壊滅的な打撃を受けるでしょう。したがって、私たちは「評価配分枠」の即時撤廃を求めます。
また、大学関係者の方々には、この問題を周囲の人々に伝え、自分の大学が置かれている状況をそれぞれの可能な方法で発信していくことを強く訴えます。
*5 財政制度等審議会財政制度分科会(2018年10月24日)への事務局(財務省主計局)提出資料