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    2017/04/24

    全大教中央執行委員会見解

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    「専門職大学」創設のための学教法一部改正に反対する
    2017年4月20日
    全国大学高専教職員組合中央執行委員会


     
    去る3月10日、政府は「専門職大学」を創設するための学校教育法の改正案を第193通常国会に提出した。
     「専門職大学」は、2014年に安倍首相がOECD閣僚理事会で講演し、従来の日本の教育を「みんな横並び、単線型の教育ばかり」「理系学生の半分以上が、工学部の研究室に入る。こればかりを繰り返してきた」「そうしたモノカルチャー型の高等教育では斬新な発想は生まれません」などと批判したうえで、「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えてい」るとしたことに端を発し、文部科学省に置かれた有識者会議、中央教育審議会で検討され、2016年5月の中央教育審議会答申『個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について』で設置の方向が答申されたものである。
     「専門職大学」の創設には、次に掲げるいくつもの大きな問題があり、賛成できるものではない。こうした大きな学制改革を行うにあたっては、より慎重かつ幅広い国民的議論が必要であり、学校教育法改正案は今国会で拙速に議決されるべきではなく、政府はこれを一旦撤回すべきである。

    1. 専門職大学という新たな制度を設けることに合理的な必要性がない
     そもそも、高等教育を含むあらゆる学校教育は職業準備教育という側面をもち、大学は幅広い教養と深い専門的知識・能力に支えられた自立した職業人の育成を課題としてきた。
     ところが、今回提案されている「専門職大学」は、職業教育にきわめて特化した高等教育機関の創設に向けた論議が進められている。有識者会議及び中教審の審議経過を見ると、検討されている高等教育機関では人文・社会科学などの教養教育が切り捨てられ、教育内容が著しく職業技術訓練に特化される。これでは、若者が高等教育を通じて深く幅広い教養と専門的知識・能力を身につけ、その成果を自らの職業生活に活かす道が閉ざされかねない。
     この制度改革の背景には、大学における高度な学問研究に支えられた高等教育はいわゆるエリート職業人にのみ必要で、多くのノンエリートには安上がりな職業技術訓練で足りるという認識が存在するが、この認識は、①職業生活に必要な知識・能力を不当に小さく見積もるとともに、②大学教育が職業人養成のために果たしてきた役割を不当に低く評価し、さらに、③大学教育は職業教育にだけではなく、社会と文化の持続的発展を担う自立した市民の育成をも担っていることを見落としている。

    2. すでに機能している高等教育全般に対する悪影響が大きい
     教養教育を軽視し職業訓練教育に特化する「大学」が設立されることは、日本の高等教育全般に対する影響は計り知れなく大きい。
     大学は、教育基本法第7条で、「学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するもの」と位置付けられ、また学校教育法第83条第1項で「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」とされており、学術の中心であり、教養と専門的能力・学芸をともに養い、かつ探究・研究する場であるとされているところである。「専門職大学」は、「大学のうち、深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させることを目的とするもの」(改正法律案要綱)とされ大学として位置付けられるとされているものの、制度設計では、授業に占める実習比率や教員に占める実務経験をもつ教員の比率を大きく高める(中教審答申での例示など)など、本来の大学の位置付け、目的から大きく逸脱したものであって、これを同じ「大学・短大」として「学士・準学士」の学位を授与するべき学校種別と扱うことは、実質的に教育基本法と学校教育法による大学の概念規定そのものを変更するに等しい。
     また、専門職業教育を行う高等教育機関として、すでに高等専門学校という学校種が創設され50年以上を経過する。これまで高等専門学校がはたしてきた役割を十分には評価することなく、そして高等専門学校の充実への十分な公的な支援、施策を行うことなく、新たな「専門職大学」を創設することは、屋上屋を架すものと言わざるをえない。



    3. 安倍政権の特徴である「思いつき」、「結果ありき」と「官僚組織の忖度」の産物としての「専門職大学」案

     冒頭に述べたとおり、「専門職大学」創設のきっかけは、安倍首相が対外的に打ち上げた私的な構想に端を発している。首相の高等教育に関する評価は一面的で、構想は思いつきに過ぎない。それを、教育再生実行会議第5次提言、文部科学省の実践的職業教育を行なう新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議、中央教育審議会と会議での審議を重ね正統化をはかってきた挙句の産物が、今回の「専門職大学」である。
     有識者会議、中央教育審議会の特別部会では、賛成論は必ずしも多数ではなく、創設の目的や必要性が不明確であることへの疑義や、創設される「大学」で授与される学位が本当に国際的に通用するものにはならないのではないかという危惧など、反対あるいは慎重な意見も多く出され、結論を得る状況ではなかったと言ってよい。そうした中で、中央教育審議会の答申を得て、法改正の提案まで持ち込んだのは、結果ありきの強引な会議運営があったからであり、そこには、首相の思惑を実現することを至上命題にする官僚機構と関係者の忖度が働いたと言わざるをえない。


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