国の退職手当引き下げ法及び国立大学法人等に対する特殊要因運営費交付金減額措置の強行と、これらを理由にした各法人等の退職手当引き下げ強行に抗議する(声明)
2017年12月28日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
声明DL
人事院の退職給付に関する実態調査の結果を改定理由にした国家公務員の退職手当引き下げ関連法案は11月17日に「公務員給与改定の取扱い」とともに閣議決定され、ただちに第195特別国会に提出され会期末の12月8日に参議院で可決成立後、12月15日に公布された。同法は国家公務員の退職手当の引き下げを2018年1月1日から施行し、即日全面適用するというものである。
一般に退職金は賃金の後払いと勤続報償の性質をもつと言われるが、いずれにしても、退職の直前になっての支給水準引き下げが許されるべき性質のものでないことは明らかである。にもかかわらず、政府は国家公務員への退職給付を何らの経過措置もなく減額する法案を労使合意もなく国会提出し、性急に通過させた。このこと自体、公務員の労働条件に対するきわめて不当な取り扱いであり、私たちは公務労働者と連帯してこれに抗議する。
「公務員給与改定の取扱い」閣議決定では、地方公務員や独立行政法人職員についてもこの改定を踏まえ「必要な措置」を要請するとしている。その上で地方公務員については、総務副大臣通知で「前回の退職手当の支給水準の引下げ時に、いわゆる『駆け込み退職』とされる事例が生じたことを踏まえ…行政運営に支障が生じないよう必要な措置を講ずること」などとして、労使交渉や議会での条例審議の必要性、年度途中での退職手当がもたらす行政運営への影響を考慮した各自治体での自主的な対応を求めている。
他方、国立大学法人等を含む大部分の独立行政法人に対して国は承継職員の退職手当に相当する運営費交付金(特殊要因運営費交付金)を「国家公務員として在職した場合」に準じて個別に算定し交付する方式をとっており、今回の改定においても、2018年1月1日付けの退職分から引き下げ後の退職手当に準じて運営費交付金を減額するとしている。国立大学法人等の中には、このことを理由に、実質的な労使交渉を一切行わないまま1月から退職手当規定を改定し、国家公務員の例と同様の退職金引き下げを強行しようとするものが現れている。
言うまでもなく国立大学法人等の教職員の労働条件は労使の自主的な交渉によって決定するものである。国家公務員の退職手当の改定や特殊要因運営費交付金の算定によって機械的に決まるべきものではない。35年勤続・定年退職の教授で約100万円と試算される引き下げ額は、退職後の生活設計に及ぼす影響は決して小さくない。これほどの不利益変更案件であれば、丁寧な説明義務を果たし、高いレベルでの労使の納得を目指して十分な交渉を尽くすことは使用者として当然のことである。
実質的な労使交渉を行わないまま重要な労働条件の不利益変更である退職手当引き下げを強行しようとする国立大学法人等の当局に抗議し、引き下げ強行の撤回と、就業規則改定による労働条件の一方的不利益変更はあくまで例外的にのみ許される最後の手段であることを踏まえた誠実交渉義務の徹底的な履行を求める。
あわせて、国家公務員退職手当の不当かつ性急な引き下げ措置が独立行政法人等の労使関係に対してもこのような形で悪影響をもたらしていることに関して政府当局の注意を喚起し、かかる事態を今後招来することのないよう、国家公務員退職手当の支給水準改定が多方面に与える影響を充分に考慮した改定プロセスの見直しを求める。