違憲の安全保障関連法制の成立に抗議し、ただちに廃止することを強く求める
安倍政権が国会に提出していた「重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案」など11本の安全保障関連法案は、9月19日未明の参議院本会議で可決成立し、9月30日に公布された。 全大教中央執行委員会は、この法案に対して6月12日に反対声明を発表し、日本国憲法の精神に基づき、我が国が非軍事の立場で国際的役割を果たすべきことを訴えた。また7月28日には、衆議院での強行採決という事態を受けて、公大連および日本私大教連とともに3団体共同アピールを発表し、この法案の「戦争法案」としての性質を明らかにした上で、廃案をめざす運動をよびかけてきた。
このたび参議院でも強行採決をくり返し、日本国憲法に違反するのみならず、日本と世界の市民が平和のうちに生きる権利を侵害する安全保障関連法制を国会が成立させたことに強く抗議する。裁判所による違憲立法審査を待つまでもなく、国会においてこの法制をただちに廃止することを強く求める。
今回の法案審議から成立に至る過程には、立法の前提となる事実と立法手続きの点で重大な瑕疵がある。例えば、砂川事件最高裁判決を理由に集団的自衛権の行使が合憲的に行えるとする政府の憲法解釈は牽強付会であり、ホルムズ海峡封鎖での機雷掃海に「切れ目のない」対処が必要であるという主張は、非現実的なものとして後に撤回されている。いわゆる立法事実が存在しないことが、審議過程でより一層明らかとなってきた。また、法案提出前に安倍首相が米国議会での演説で法案成立を「公約」しただけでなく、自衛隊の幕僚幹部が法案提出以前から米軍幹部と法案成立を前提とした協議を行うなど、国権の最高機関たる国会を軽視し、文民統制の原則をゆるがせにすることはおろか、主権の独立にすら疑問を抱かせる事態も明らかとなってきた。
にもかかわらず、特別委員会の委員の質疑に対して政府が後日の回答や資料提出を約束したあまたの事項が未解決のまま、また地方公聴会の報告すらされないまま、委員外の与党議員が委員長席の周囲を占拠して委員会採決の形のみを作るという、言論の府たる国会の役割を自ら否定するような暴挙によって議論は一方的に打ち切られた。そこには議会制民主主義を支える一片の良識も存在しない。
今回の安保法制によって、自衛隊が海外で武力行使を行うこと、日本にとって「密接な関係にある他国」と戦闘状態になった相手国に対して日本が武力攻撃を行うことが可能になる。それは実質的には、自衛隊員が他国で他国民に銃を向け、殺し殺される状況が現実に生じることを意味する。
日本がそうした武力攻撃を行う国の道を歩むことを望まず、また日本国憲法の原理と民主主義を守り活かすことを求める数多くの市民が、全国各地でこの法案に反対する声をあげた。青年・学生、母親、各種産業の労働者など、幅広い市民各層が、主体的にこの法案に反対する運動にくわわり、集会やデモを行ってきた。憲法学者の大多数、最高裁長官・内閣法制局長官経験者、元防衛官僚ら専門家たちも、それぞれの立場から、集団的自衛権の行使を認める今回の法案は違憲であり、立憲主義および法治国家の枠組みを根本から覆すとの見解を示した。
大学をはじめとする高等教育機関においても、14,000人を超える学者・研究者が加わった「安全保障関連法案に反対する学者の会」をはじめ、明らかになっているだけで全国150近い国公私立大学で、教職員、学生、卒業生ら有志が反対運動に立ち上がった。
平和と民主主義を守ることは、大学・高等教育機関が自由闊達な教育・研究を通じてひろく社会に貢献するための基礎である。全大教は、今回の法案に反対する運動で示された市民そして大学人の声と連帯し、安保法制廃止を求め、立憲主義と平和主義を確立するために力をつくすことを表明する。
全国大学高専教職員組合中央執行委員会