改めてすべての大学法人等に有期雇用教職員の雇用上限撤廃を求める
―東京大学における「5年雇用上限規定」撤廃は重要な到達点―
2017年12月19日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
声明DL 掲示用DL
去る12月12日に東京大学教職員組合が得た回答によれば、東京大学の法人当局は、教職員組合の要求に応え、これまで有期雇用教職員(短時間勤務有期雇用教職員、特定有期雇用教職員)に適用してきた雇用契約の更新の上限を「5年」とする一律の規定を撤廃する方針を決定した。また、新聞報道によれば、同当局はこの方針転換の理由を「安心してより高いパフォーマンスを発揮してもらうため、有期、無期を問わず全ての教職員の働き方や雇用環境を改善することを最重要と捉えた」と述べている。
全国の国公立大学、高専、大学共同利用機関ではたらく教職員で組織する私たち全大教及び加盟組合は、国立大学法人化後に多くの大学法人等が契約更新の期待権の発生回避を意図して設けた有期雇用教職員の契約更新の上限規定について、これを強く批判し、一貫して更新上限の撤廃を求める運動に取り組んできた。「無期転換ルール」が設けられた2012年改正労働契約法の成立後は、同ルールに基づく有期雇用教職員の無期雇用転換の促進と、同ルールの潜脱として作用する「5年手前での雇い止め」規定の撤廃を求め、さらに運動を続けてきた。2016年9月には、「無期転換ルール」の本格発動を間近に控えて教研集会アピール「職場の大切な仲間の『使い捨て』を許さないたたかいに、教職員の幅広い連帯で立ち上がろう」を発表し、組織を挙げての最重要の運動課題として位置づけるとともに、公共機関、教育機関として大学法人等が果たすべき役割は何かという見地からこの問題を世論に問い、その後押しを得てのたたかいを提起した。
今回の東京大学の「5年雇用上限撤廃」決定は、法人化後、また改正労契法成立後からこれまでの教職員のたたかいの重要な到達点である。東京大学教職員組合は、大学横断的な組合である首都圏大学非常勤講師組合と連帯しながら、雇い止め当事者を含む学内教職員の声を組織し、また東京大学を注視する世論を動かしながら、着実に法人当局の方針転換を迫り、実現させた。その背景には、改正労契法の趣旨にそむいた対応姿勢を改めず、多くの有期雇用教職員をいたずらに「使い捨て」する人事政策を維持しようとする大学法人等に対する、国会審議、各種報道その他を通じた国民の厳しい目があった。
一方、いまだに大学法人等の相当数が、有期雇用教職員の無期雇用転換を避けようとし、一律の雇用更新上限規定の維持に固執している。改正労契法施行後の2014年4月に就業規則を改定し、2013年4月に遡及して適用し、その規定を根拠に2018年3月に多数の有期雇用教職員を一律に雇い止めしようとしている東北大学の事例など、「無期転換ルール」の適用を回避するために手段を選ばない法人当局の姿勢は、公共機関、教育機関にあるまじきものとして、これまで以上に厳しい批判の集中を免れない。また、東京大学の今回の決定においても、個別に雇用上限を設定できるとする「プロジェクト型の雇用」の濫用などによって、無期雇用転換を回避する運用がなされるおそれは排除できない。個々の有期雇用教職員の雇用の安定を勝ち取るたたかいの手は、「一律の雇用上限」が撤廃されたあとも緩めることはできない。
2018年4月の「無期転換ルール」本格発動に向け、今回の東京大学の成果を追い風にさらに無期雇用転換促進、雇用上限撤廃のたたかいを進めることを宣言するとともに、すべての大学法人に対して、改正労契法の趣旨に反して教職員をいたずらに使い捨てし、大学法人自身の経営資源をも毀損する有期雇用教職員の契約更新上限規定をただちに撤廃することを改めて求め、声明とする。