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2015/01/04
全大教中央執行委員長「新年挨拶」
| by
管理者
「 学問研究を自律的に発展させ、国民の学びを保障するために」
全大教中央執行委員長 中嶋 哲彦
(名古屋大学)
2015年。新しい年を迎えました。
一つのトピックを重点的に取りあげるのは、新年のあいさつとしてふさわしくないかもしれませんが、それほどの重要なこととして、次のことを申し上げたいと思います。
昨年11月、中教審高大接続特別部会が「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた 高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」を取りまとめ、センター試験廃止=大学入学希望者学力評価テストと高等学校基礎学力テストの二本立化や「思考力・判断力・表現力」重視などを提言しました。「高大接続」という言葉から大学入試制度改革と受け止められがちですが、この制度改革構想の本質は、この二つのテストを軸に大学と高校を総体として分断・再編するところにあると見るべきでしょう。
大学入学希望者学力評価テストは大学入学資格試験とでもいうべきもので、「知識・技能」に加えて「思考力・判断力・表現力」も評価します。すべての高校・高校生が高い評価を得られるわけではありませんから、大学進学の門戸がこれまでより狭められる可能性があります。他方、高等学校基礎学力テストは、就職や専門学校進学の際に高校における「知識・技能」の習得状況を証明するものです。高等学校基礎学力テスト対応の高校に入学した若者は、その時点で大学教育から排除されてしまいます。
これは大学進学率を低下させ、専門学校等への進学率を増加させるでしょう。しかも、それは結果でなく、この制度改革の目的であると考えるべきだと思います。
他方、文部科学省は昨年10月に「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」を設置し、急ピッチで審議を進めています。「実践的な職業教育を行う高等教育機関」は、教育再生実行会議が「社会的需要に応じた質の高い職業人の養成」を目的に、第五次提言で打ち出した制度改革構想の一つです。この制度改革は「大学、高等専門学校、専門学校、高等学校等における職業教育を充実」させようとするものですから、専門学校の高等教育機関への昇格と既存大学の「実践的な職業教育を行う高等教育機関」化という二つの形で展開することになるでしょう。
こうして、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の創設と高大接続は、職業教育に重点を置いた総合的な学制改革構想の一部であり、大学を職業教育重点機関と研究重点機関とに再編成しようとするものであると見なければなりません。上記有識者会議では、委員の一人から、グローバル経済対応のG型とローカル経済対応のL型に区分し、L型では人文社会科学の廃止、研究者排除=企業出身者の教授就任などを内容とする意見が飛び出しました。荒唐無稽な内容も含まれていますが、大筋において政府の政策と一致していると見るべきでしょう。
不法不当な賃金削減、大学自治侵害の「ガバナンス改革」、学問研究を破壊する大学再編。これらを許さない取り組みを、今後ますます強めていかなければならないことは言うまでもありませんが、それに加えて総合的な学制改革が準備されていることに注意を向け、学問研究を自律的に発展させ、若者を中心とする国民の学びを保障する大学・高等教育機関づくりに邁進していきましょう。
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