2021年度から開始される大学入学共通テスト(従来の「センター入試」に代わる仕組み)に、いわゆる英語4技能「読む・聞く・話す・書く」を測定するためとして導入される英語民間試験の実施をめぐり、大きな混乱が起こっています。 今回問題となっている英語民間試験は、2回までの受験が可能で、早いものは試験日程が2020年4月から始まりますが、半年前の現在になっても具体的な日程や受験会場が明らかになっておらず、受験生、保護者、高校の間で不安が広がっています。また、英語民間試験は6団体が実施する試験を活用するものですが、その中には、地方では受験できない民間試験があること、共通テストの受験料に加えて英語民間試験にも検定料が必要になることから、地方に住んでいる受験生や経済的に困窮している受験生が不利な立場に置かれることも懸念されます。こうした多数ある英語民間試験利用にあたっての不安・懸念を、文部科学省、大学入試センター、各大学は払拭することができないまま、時間が経過し実施期日が迫ってきています。 2024年度までは英語民間試験活用と併行して共通テストでの英語試験も継続する予定となっているので、英語民間試験を利用しなくても2021年度の大学入試は可能です。 受験生、保護者、高校の不安を取り除き、公平で安定的な入試を実施するために、2021年度の共通テストでは英語民間試験を利用せず、2022年度以降の実施の可否や内容について慎重に検討するべきです。また、各大学では、あらためて、2021年度の共通テストにおける英語民間試験の利用中止を議論し早期に決定するべきです。(2019年9月27日補足:声明の中に出てくる年度表記はすべて、当該年度入学者選抜で表記しています。「2021年度から開始される」は「2020年度に実施される2021年度入学希望者向けの」という意味、また「2024年度までは英語民間試験活用と並行して共通テストでの英語試験も継続する予定」も「2023年度に実施される2024年度入学希望者向け試験までは共通テストでの英語試験も継続する予定」という意味であることにご注意ください。)
全国大学高専教職員組合は、中央執行委員会名で緊急声明、「2021年度大学入試共通テストにおける英語民間試験利用の延期と再検討を求めます」を発表しました。声明で述べているとおり、受験生、保護者、高校の不安を取り除き、公平で安定的な入試を実施するために、2021年度の共通テストでは英語民間試験を利用せず、2022年度以降の実施の可否や内容について慎重に検討するべきです。
大学入試は大学に主体性が存するものであり、いかに全国規模の共通試験の方式を文部科学省が決定してきたものといえども、大学は、混乱を作り出している主体でもあります。いまこそ、あらためて現在の混乱を収拾し、あるべき入学者選抜の議論の時間を確保し活発化させるために、それぞれの所属する大学で、2021年度の入学者選抜において民間試験を活用しない方針を決定するべく、行動していきましょう。