【見解】日本学術会議の法人化を目指すとする法案提出について
2025年2月7日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
政府は2025年の通常国会で日本学術会議法を改正し、学術会議のあり方を変えようとしている。最近の報道によれば、政府法案は内容上、2024年12月20日に出された有識者懇談会による最終報告に依拠するものと見られる。同報告は、大臣には中期計画認可の権限は持たせないとするなど、それまでの議論より幾分穏当になっている。しかし、学術会議を法人化すること、会員選考に関する助言委員会、評価委員会、監事などの設置を法定化することなどを提言しており、この方向での法改正は、学術会議の独立性を侵害する可能性の高い仕組みを導入しようとするものと言わざるをえない。
全国大学高専教職員組合中央執行委員会は、2024年2月13日の見解に記したように、現行の日本学術会議法の枠内で、学術会議の独立性を担保することが妥当であると考える。
国立大学の例にみるように、法人化は必ずしも独立性を高めることにはつながらない。また、会員以外の者で構成する会員選考に関する助言委員会、内閣府に設置する評価委員会、内閣総理大臣が任命する監事などを設置して学術会議の活動に関わらせることは、学術会議の会員選考や活動に、政府や産業界などのそれぞれの目的からする干渉を招くおそれがある。有識者会議最終報告と日本学術会議総会を受けた日本学術会議会長談話では、法制化の過程で更なる検討をする余地があること、法制化に向けて具体的な検討が必要になる論点が残されていることが述べられており、現段階ではまだ十分な議論がなされているとは言えない。
科学は、現在の国家という枠組みや短期利益を超えた人類普遍の平和と福祉のために営まれるべきであり、国の方針や政策の中に縛られるべきものではない。そうした科学をささえる学術界の日本における代表が日本学術会議である。政府には、日本学術会議の意義を十分に理解し、その独立性と発展を保障する対応を望む。