市民生活の自由を侵害する「共謀罪法」の成立と
国会運営の民主主義を破壊した強行採決の暴挙への抗議声明
2017年6月15日、与党は数の論理にものを言わせて、参議院法務委員会での採決を省略するという国会の基本的なルールを無視する異常なやり方で、「共謀罪法案」の本会議採決を強行し、「共謀罪法」を成立させた。
この間の国会審議の中で明らかになってきたのは、処罰対象となる「組織的犯罪集団」の行為の範囲はきわめて広汎かつ曖昧であり、市民の日常の活動でさえ、犯罪の計画や準備行為に該当するとして捜査の対象とされる可能性があるということである。
戦前・戦中の治安維持法が、捜査機関に著しく濫用され、政府にとって不都合なありとあらゆる言論、思想の弾圧に使われたことは歴史が明らかにしているところである。今回のテロ等への取り締まりを口実として成立した「共謀罪法」は、捜査機関による濫用の危険を排除できないものとなっている点で治安維持法と同様の性質をもち、市民の内心の自由を脅かし自由な活動を萎縮させ、思想・良心に対する抑圧を招くものであり、直接的なテロ対策よりも、むしろ国民の意識を動員するための装置のひとつとしての狙いがあると判断せざるをえない状況がある。すなわち、これまでに安倍政権の下で強行されてきた、憲法を無視した集団的自衛権容認の安保法制や特定秘密保護法等は、戦争ができる国を目指して国の根幹に関わる法制を変更してきたものである。こうした状況が、いわゆる森友問題で図らずも明らかになった、教育勅語復活のねらいに象徴されるような、教育からの軍国少年育成の目論見などと連動すれば、「共謀罪法」の濫用によって自由の抑圧を可能とする仕組みが、戦争に向けて国民の心の動員につながっていく危険性がある。さらに、「共謀罪法」が広く自然環境保護運動、労働運動など社会運動全般への抑圧につながることも明らかである。
加えて、「共謀罪法」をめぐっては、軍事研究への大学動員の狙いに象徴されるような大学の研究・教育の誘導やいわゆる加計学園問題に象徴される大学設置などの教育行政への権力介入も連動していると判断せざるをえない状況がある。集団的自衛権をめぐって、憲法学者の大多数の見解を無視したという暴挙は、今日憲法に保障される学問の自由すら大きく侵害されかねない状況にあること示している。この意味で、今回の「共謀罪法」の成立は、戦前の、大学も含めた思想弾圧事件につながるような危険性を孕んでいるといわざるをえない。
そして、なにより今回、採決「強行」の極みである参議院委員会採決を飛ばすという、常識を遥かに超えた民主主義破壊の暴挙は、安倍政権の驕りと焦りを象徴するとともに、政権がいざとなると独裁国家並みの国家運営を実行する存在であることを白日の下に晒した。
我々は、「共謀罪法」の成立に断固抗議するとともに、それに連動する戦争や自由の抑圧に向けての様々な動きに対して反対する。そして民主主義と憲法が守られ、安心して生活できる平和な世界をこそ求めるものである。