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    2023/10/20

    国際卓越研究大学認定過程に関する全大教中執声明を発表しました

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    2023年8月30日に、文部科学省「国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(アドバイザリーボード)」は、国際卓越研究大学の認定候補を決定したと発表しました。認定候補校には東北大学1校だけが選定されました。

    政府は国際卓越研究大学の認定審査における大学への過度の干渉をやめるべきです」
      声明 

    2023年10月20日
    全国大学高専教職員組合中央執行委員会


     
    2023年8月30日に、文部科学省「国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(アドバイザリーボード)」は、国際卓越研究大学の認定候補を決定したと発表しました。認定候補校には東北大学1校だけが選定されました。

     今回の認定候補決定に際して、選定にあたったアドバイザリーボードは、申請した各大学(認定候補とされた大学とされなかった大学双方)に対して、運営体制、研究、国際化、財務など多岐にわたり具体的なアドバイスを行う方針を明言しています。これは大学の自律的な運営によりその発展を期する教育基本法や国立大学法人法の原則に反し、学問の自由の侵害ともなりかねない問題です。以下に問題点を指摘し今後の是正を求めます。


    背景と経緯

     国際卓越研究大学はいわゆる10兆円ファンドによる支援をうけることのできる大学であり、制度の構想時から、認定を受けることのできる大学は数校と言われてきており、今回の「審議の状況」でも最終的には数校を目指すとしています。認定候補の事前の絞り込みでは、東北大学に加えて東京大学、京都大学もその候補として上がっていました。


     全大教は、大学ファンドが設立されその支援を受ける大学のあり方の検討が進められている2022年1月25日に見解を発表し、ファンドからの支援と大学ガバナンス改革とを結び付けないこと、大学ファンドからの支援とは独立して運営費交付金を充実させること、大学に対してトップダウン体制を求める方向性を転換して構成員によるチェック・牽制による仕組みとすること、支援対象大学に3%の事業成長を求めないこと、が必要と主張しました。国際卓越研究大学法が国会で成立した2022年5月には声明を発表し、大学ファンド運用益は幅広い大学への支援に活用すべき、大学自治に基づいた研究保障、運営費交付金等の充実が必要であると主張しました。


    認定審査過程についての問題点

     今回、東北大学を認定候補に決定するに際しては、「一定の条件を満たした場合に認定するという留保を付して」の選定である、「認定候補となった大学に対して、引き続きハンズオンによる体制強化計画案の磨き上げを実施することも念頭に置き、総合的に判断した」として、今後の正式認定までの間、アドバイザリーボードが認定候補大学に対して強くアドバイスを行っていくことを明言しています。

     東北大学による申請にあたっての「体制強化計画第一次案」では、研究面、研究環境面、国際化、財務面での数々の数値目標が挙げられるとともに、合議体(「東北大学総合戦略会議」)を設置し、学長の選任や重要事項の決定を行うことにするなど、これまでCSTI等が示してきた国際卓越研究大学が備えるべきガバナンス体制をなぞる形での構想が示されていました。

     このように、国際卓越研究大学に認定されるためには、アドバイザリーボード、CSTI(総合科学技術・イノベーション会議)の意向に沿う形での大学改革が求められており、それは政府による大学自治への過度な干渉と言わざるを得ず、そうした政府の考え方は絞り込みの段階では選ばれていた東京大学と京都大学についてのコメントの中にも見てとれます。

     東京大学に対しては、「既存組織の変革に向けたスケール感やスピード感については必ずしも十分ではなく、工程の具体化と学内調整の加速・具体化が求められる。今後、構想の具体的内容を学内の多くの構成員が共有し、全学として推進することが確認できれば、認定候補となりうると考える」、「長期的・世界的規模のビジョンと戦略を構築する 「法人総合戦略会議」の設置に加え、総長とプロボストの役割分担や、「最高価値創出責任者」の責任や権限の明確化が必要である」など、今後の認定候補となるための方向性を示しています。

     京都大学に対しては、「国際標準の研究組織へ適切に移行するためには、新たな体制の責任と権限の所在の明確化が必要」、「現在の執行部が有する変革への意志が、長期間にわたり大学として教職員に引き継がれる必要があり、構想の具体的内容を学内の多くの構成員が共有し、全学として推進することを期待」すると、組織運営体制に注文をつけています。

     今回の審査については、「1 国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力 、2 実効性が高く、意欲的な事業・財務戦略、3 自律と責任のあるガバナンス体制」の観点から審査を行ったとされていますが、研究力について明確な指標等での評価は記載されずもっぱら組織運営体制の課題が述べられています。こうした審査体制のもとで東京大学、京都大学が、東北大学に続いて次年度以降の認定、そして支援を勝ち取ろうとするならば、アドバイザリーボードが一方的に示す運営体制整備の方向性に沿う形での変革を迫られています。


    認定審査を通じた大学への過度な干渉の中止を

     以上見たように、今回のアドバイザリーボードによる国際卓越研究大学の認定候補校の選定過程では、認定候補に選定された大学、今回は選定されなかった大学のそれぞれに対して、過度な干渉と言うべき方向性が示されています。これは、2004年の国立大学法人化、2014年の学校教育法改正による学長権限の強化などによって強まってきた、大学を一定の方向に誘導しようとする政策の流れの延長にあると考えられますが、政府の審議会の一つであるアドバイザリーボードが大学の運営体制に具体的に口を出すという次元の異なるものです。

     大学は、大学を構成する教職員と学生がともに学ぶ場であり、教育と研究の力の源泉はその現場の自主性・自律性です。国際卓越研究大学の構想、そして今回の認定審査の過程は、そうした大学の力の源を涵養することとは異なる、政府が示す方向性にむかって大学ぐるみの競争と事業成長を求めるものとなっています。

     わたしたちは、国際卓越研究大学の認定審査過程での大学への過度な干渉を止めることを強く訴えます。そうすることが大学の力を引き出し伸ばすことへの道だと考えるからです。

    以上


    16:00 | 運動方針、声明、見解、要望等
    
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