国立大学法人第二期(2010~2015年)中期目標・中期計画策定に
関する全大教重点要求(チェックリスト)
2009年4月
全国大学高専教職員組合
1.次期中期目標に対する構成員からの意見反映の保障
本年6月には文科省に次期中期目標・計画が各国立大学から提出される。項目数は第一期に比し、大幅に削減され、およそ100項目とされている。この次期中期目標・計画の策定にあたって、すでに一部の大学では、役員など一部だけが関与して策定した案が、タイムスケジュールなどを理由に、組合など教職員や、教授会、教育研究評議会などにおける十分な審議なしに、策定されようとしている。
次期中期目標・計画が今後6年間の研究教育を大きく規定すると共に、評価と予算配分の対象となる極めて重要な事柄であることをふまえ、教授会をはじめ、構成員の中での十分な検討と合意が不可欠である。
組合は、その労働と生活の実態を踏まえ、短期間に問題の所在を分析し、多くの教職員へ宣伝や意見集約を進めて、それを次期目標・計画に反映させる努力をしなければならない。具体的には、中期目標に関する説明会、意見反映のための大学法人との交渉・協議が必要となる。
2.中期目標・計画項目内容における論点
(1) 第一期の総括を踏まえた次期中期目標・計画の作成
大学評価機構や文科並びに財務による業務実績の評価は中期目標・計画に書き込まれた内容に沿って行われる。第一期は時間的制約の中で、多くの大学で教職員の意見や思いとはかけ離れたところで中期目標・計画が策定され、それがその後の運動でも大きな桎梏となっていた。第一期で進んだ各国立大学法人における「管理運営体制」、人事権や予算配分システム、労働条件など、様々な変更がどういう事態をもたらしているか、実態に即した総括を踏まえた次期中期目標・計画の策定を求めることが重要である。
(2) 次期中期目標等の作成に関する重点要求
第一期で進んだ国立大学における改革の特徴は大学間ならびに大学内における過度の競争と成果主義である。それらが総じて文科省から高い評価を受けていることから、次期においても一層鮮明に書き込まれる可能性が高い。又、そのための学内予算配分が均衡を崩したものとなる危険性が高く、基盤的教育・研究、医療に最低限必要な経費も削減されていくことが危惧される。以下、いくつかの具体的事項について留意するべき諸点を示す。
① 「機能別分化」について
「機能別分化」については、大学の将来を大きく規定するものであり、構成員の合意なしに拙速な形で中期目標に記載すべきではない。組合として、学長、役員会に対して、大学のおかれた現状を検討し、個性ある発展の方向性について構成員に対して「政策」の提案と説明の場を求める。同時に組合として修正要求をまとめ意見反映をはかる。
② 組織の改編・統廃合
とりわけ、単なる教育研究上の取組にとどまらず、部局組織の改廃・統合、場合によっては大学間統廃合などの計画内容がおおいに危惧される。
③ 重点教育研究領域の策定と資源配分制度
個性化、特色付けのために重点的な教育・研究領域を作ることが考えられる。同時にこれらに学長裁量経費や学長裁量定員等としてヒト・カネを集中させるために、乏しい基盤的経費をけずって傾斜配分することが想定される。この間のノーベル賞受賞が示すように、大学では基礎研究が何よりも重要となる。
運営費交付金であれ、科研費間接経費であれ、個性的な教育研究の裏付けとなる基盤的な支出なのであって、こうした基礎基盤的な経費に手をつけて、傾斜配分するというのでは、制度本来の意味の否定になる。
④ 学長選考制度の改善
現職学長の恣意がそのまま通りかねない学長選考制度のあり方を見直し、透明
性・説明責任と教職員多数の意思が反映できる学長選考制度の確立
⑤ 国立大学法人固有の職員人材登用政策・制度の確立
大学が採用した職員を大切にして、責任を持って育成する政策・制度の確立。
幹部職員を、異動職のみに依存せず、採用から部長・事務局長等昇任まで至る登用制度の整備。教育研究を担う大学構成員として自覚と展望をもてる職員育成方針を明確にさせる。
具体的には、
・法人制度の下での専門性の高い職員の採用・養成制度の具体化
・個別法人単位での非正規からの学内登用制度設立
・定年延長等を展望しながら、経験と年齢のバランスのとれた職員構成、経験、専門性を活かせる再雇用制度への改善。
⑥ 無限定な任期制への歯止め
大学によっては任期付き教員ポストの比率まで打ちだそうとしている。横断的
労働市場が未成熟な日本では、任期制が有効に働く余地が少なく、逆にモラールの低下につながるケースが多い。教員任期法の趣旨に基づき、任期制はプロジェクト等真に有効な分野に限定させる必要がある。
⑦ 男女共同参画の実現
実効性ある男女共同参画計画が作成されるよう組合として意見反映を行う。
⑧ 労使の協力による問題解決(イコールパートナーシップ関連)
法人化後なお対応や是正ができていない労働時間慣行や職場ハラスメント風習の早期是正。年齢・性別・国籍・障害の有無や相違で労働条件に差別を生じさせず、こうした差異を超えて教職員が働きがいを得られる職場づくり。とりわけ、差別を是正し、教職員間の相互連携を築くような労使共同機関の設置ないしはその機能強化
1) 労働安全衛生委員会の機能強化:メンタルヘルスの調査・原因分析・対応措置策定(時短などの取組=職場の指導、場合によっては時短に関わる労使共同機関の別途設置)
2) 子育て支援に必要な施策の具体化:調査分析・計画等策定を行うこと。あるいは組織設置
3) イコールパートナーシップ:アカハラ・セクハラ調査分析と具体的対応が必要である。(とりわけ教職員への研修教育の実施、性別年齢国籍による採用・昇進差別へのアファーマティヴアクション{数値目標を含む差別是正措置})
⑨ 学生支援関係への支出
資源配分の中の一つには、学生支援関係事項も考えられる。グローバルなレベルにまで広がりつつある学生獲得においては、個々の大学固有の奨学金や授業料免除制度の改善もしくは新設、学生寮・学生食堂・図書館・ネットワークの新設・更新などである。ちなみに大学独自奨学金制度についていえば、独自の寄附財源などを持たない場合には、基盤的な経費からの持ち出しになる。学生にとってどれほど魅力的な内容であるかという制度の有効性と、これによる大学への財政負担のバランスについて慎重な検討が必要である。
⑩ 施設整備借入金計画
とりわけ施設設備の更新では、借入金の設定なども想定される。そうした場合に、その返済と健全な経営をどのように両立させられるかという点で真摯な検討が必要である。
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