国公立大学・高専・大学共同利用機関で働くすべての教職員の賃金改善を求める
~2018年人事院勧告を受けて~
2018年8月10日 全国大学高専教職員組合中央執行委員会
「非公務員型」の独立行政法人である国公立大学・高専で働く人の賃金は、公務員給与、民間賃金などを参照しながらも、人材確保や法人の業績向上に資するよう、各法人が自主的に、労使自治のもとでより良いものにしていくことが法制度上は期待されている。しかし、各法人をとりまく予算、評価などによる事実上の縛りは、そうした法制度上の期待を絵に描いた餅のようなものにしている。各法人に配分される運営費交付金のうち、特に教職員の人件費を支える基盤的部分はこれまで一律の係数による削減にさらされてきた。また、人事院勧告に代表される官民の賃金改定や、物価上昇、税・社会保険料の改定などに対応した予算措置がなされないことは、特に直近の経済情勢において、もともと厳しい各法人の財政状況をさらに深刻な困窮に陥れている。
その結果、現実は、社会から期待される役割は年々高度化・複雑化しているにもかかわらず、事務・技術職員の賃金水準は国家公務員を下回り、教員の賃金水準は人材確保で競合する私立大学に及ばない。また、最近では、若手教員の活躍や国立大学の機能強化のためとして「人事給与マネジメント改革」が叫ばれ、教員への年俸制拡大が急速に動きはじめている。若手教員の活躍が危惧される事態の背景には、基盤的運営費交付金の際限のない削減によって常勤教員ポストの不補充・凍結を余儀なくされている事情がある。
研究どころか学生実験すら満足にできないほどに教育研究費を減らされ、それを補うための外部資金獲得に教育研究時間を奪われ、時間のない中で短期的な研究成果を要求されている。さらには任期制や年俸制が押し付けられ、限られた安定雇用ポストを目指す競争のもとで馬車馬のように働かされる。こうした状況に追いやられた教員は疲弊しつくし、そのように不安定な職に就こうという若者の数は減少している。現状が続くならば、高等教育や研究の質が保ち続けられるはずもなく、結果として国民が不利益を被ることは火を見るより明らかである。
本年の人事院勧勧告は、月例給を655円(0.16%)・勤勉手当を0.05月分引上げることとした。また、社会的な問題になっている長時間労働の是正や非正規職員の処遇改善にも一定触れている。さらに、定年延長に向けては、定年年齢を65歳まで段階的に引上げるとした意見の申出が行われた。しかしながら、これらはいずれも求められる社会情勢に十分応えているとは言えない。
賃金体系や雇用形態を問わず、国立大学法人等教職員の賃金水準の大幅改善が必要なことは明らかである。教職員がモチベーション高く働き、社会の期待に応えることができる賃金水準・労働条件・教育研究条件を整備するためには、基盤的運営費交付金の増額が欠かせないことは明らかである。全大教中央執行委員会は全国の力を結集し、これらのことを実現する決意を表明する。