この度、内閣府は「日本学術会議の在り方についての方針」(12月6日)を公表し、この方針をふまえた「日本学術会議の在り方について(具体化検討案)」(12月21日)を示しました。私たちは、学術の発展を担う大学教職員の組合として、この政府方針および具体化検討案に対して意見を述べ、見直しを求めます。
「日本学術会議の在り方についての方針」に対する声明 声明
2022年12月23日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
この度、内閣府は「日本学術会議の在り方についての方針」(12月6日)を公表し、この方針をふまえた「日本学術会議の在り方について(具体化検討案)」(12月21日)を示しました。私たちは、学術の発展を担う大学教職員の組合として、この政府方針および具体化検討案に対して意見を述べ、見直しを求めます。
12月6日付の政府方針は、日本学術会議からの意見聴取などを経ずに、一方的に出されたものです。まず、そうした決定プロセスに問題があります。
政府方針および具体化検討案の内容に関して、特に問題の大きい点を三つ挙げます。すなわち、「政府等と問題意識や時間軸等を共有」、会員等の選考・任命について「会員等以外による推薦などの第三者の参画」「内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」などとされている点です。これらの内容は、学問の自由を保障する憲法に抵触するものと考えます。
憲法第23条で定められている学問の自由とは、個々の研究者が自由に研究することを保障するに留まるものではなく、学術界全体が専門家集団として固有の価値観と規律によって自主的、自治的、かつ自律的に運営されることを含みます。これは、政府等の方針に学術界が従属させられ、その結果として破局的な戦争に突き進んだことへの反省から設けられた条文です。
こうした学問の自由の理念に照らすと、政府が学術界に対して「政府等と問題意識や時間軸等を共有」を求めることには大きな問題があります。学術界は固有の問題意識と時間軸によって展開するものであり、それによって中立的、客観的な視点からの知見の創造を行うものだからです。
次に、会員等の選考・任命に第三者を参画させることも同様に大きな問題を含んでいます。現行の推薦方式は、諸外国の同様の機関におけるスタンダードな方式です。報道によりますと、「第三者」として具体的には経済界の関与が想定されているとのことです。これは会員の選出に学術界の判断とは別個の判断基準を持ち込むことであり、学問の自由に対する侵犯と言わざるを得ません。さらには、諸外国から日本の学術界の中立性、客観性を疑われることになりかねません。
三つ目の「内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置」を求めることは、学術界に対して政権におもねることを求めることとも受け取られかねず、これも学問の自由に対する侵犯となります。
政府方針では「高い透明性の下で厳格な選考プロセスが運用されるよう改革を進める」ともされていますが、2020年9月のいわゆる「日本学術会議会員の任命拒否」に対して、政府はそのプロセスなどを全く明らかにしておりません。透明性を欠いており、改革が必要なのは政府側ではないかと思われます。
以上のことに鑑みて、政府方針および具体化検討案は大きな問題を含むものであり、全面的な見直しを求めます。今後の議論にあたっては、政府の一方的な案によるのではなく、日本学術会議、そしてひろく学術界・国民との対話にもとづくようあわせて求めます。
学術界の使命は、日本ただ一国の国力向上ではなく、人類文化全体の発展に貢献する真理の探究です。私たちは、真理の探究を支える学問の自由の保障こそが、科学技術の発展をもたらすと確信しています。