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    2022/10/13

    全大教中央執行委員会「国際卓越研究大学法省令案基本方針素案意見」

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    文部科学省において、国際卓越研究大学に関するパブリックコメントの募集が10月13日締切で行われています。全大教中央執行委員会では、その内容を重視してパブリックコメントを提出いたしました。

    「国際卓越研究大学法施行規則を定める省令(案)」お
    よび
    「国際卓越研究大学法に基づく基本方針(素案)」へのパブリックコメント

    2022年10月13日 全大教中央執行委員会

    《法の定める前提》
    ・法第4条において、大学の設置者が申請を行い、文部科学大臣の認定を受けるとされている。
    ・同上第3項では、認定の基準は大学が各号の基準のいずれにも該当しているとき認定するとされており、設置者(法人等)ではなく大学の実績、体制等をもって認定を判断することとされている。
    ・そうした下で、同条同項第6号の定めは、大学での「研究に関する業務執行と管理運営に関する業務執行の役割分担が適切に行われていることその他業務執行体制が研究及び研究成果の活用を組織的に推進するために必要なものとして」省令に定める基準に適合していることを求めている。

    《施行規則を定める省令(案)の問題点》
    ・学校法人の設置する私立大学、国立大学法人の設置する国立大学、公立大学法人の設置する公立大学においてはいずれも、財務その他の管理運営業務は法人が、そして教育研究に関する業務は設置されている大学が担うことが通例である。
    ・法第4条第3項第6号は、「大学」が認定基準に該当するかを判断するとしている下で、財務その他の管理運営業務を掌理する役割が掲げられ、それが教育研究に関する業務を掌理する役割との分担関係が基準とされていることは、法第4条第3項で大学を認定判断の単位としていることと矛盾する。ここでは法人財務に関する業務の体制を問うものではなく、法で規定している通り「大学」内部での「教育研究」と「管理運営」の業務掌理の役割が分担されていることを認定判断基準とすることを明確にする必要がある。

     法第4条第3項第1号で定める実績について学術論文データーベースに基づいて論文の被引用数上位10%論文数が概ね1000本以上であり、かつ申請大学の論文総数に占める比率が概ね10%以上であることとされている。
     研究水準を示す客観的指標として論文の被引用数が重要であることは確かであり、報道によれば学術情報サービス会社「エルゼビア」のデータでは、2016年~2020年の5年間のTOP10%論文数は、東大5920本、京都大3977本であり、1000本以上を満たす大学は10数校とされる。
     しかし科学技術振興機構「151研究領域におけるTOP10%論文数の国際シェア順位の推移」を見れば、その研究領域は生命科学など理工系分野である。科学技術指標などで示されるTOP10%論文数のデータも全て理工系分野に限定されており、これは被引用数でもって研究論文の質を評価する手法が人文社会科学系では重視されていないことを示すと言える。また理工系においても全論文数におけるTOP10%論文の比率は領域における格差が大きいとされる。このような中で、単にTOP10%論文数のみならず申請大学の論文総数に占める比率を評価基準とすることは、人文社会科学系を軽視した理系偏重の大学の資源配分の圧力を高めるばかりか、理工系分野においてもTOP10%論文の「生産性」を基準にした研究者の新陳代謝への圧力が高まるのではないかと懸念される。それは優れた研究を生み出す研究者のすそ野を狭めることにもなりかねない。
     国際的に評価され人類に貢献する成果を持続的に生み出していく国際卓越研究大学を生み出していく上で、「概ね1000本以上」という基準が目安になるとしても、人文社会科学系の特性を配慮(被引用数以外の評価)する基準を明確にするとともに、「概ね10%」という比率の基準はむしろ削除すべきである。

     法第4条第3項第1号で定める実績について、上位10%論文数とその比率10%以上の基準と並んで、教員一人当たりのTOP10%論文数が概ね0.6以上あることが評価基準として示されている。1000本以上の論文数を満たせない規模の大学においても国際卓越研究大学の申請の可能性をもたらすものとされている。
     TOP10%論文数の水準については理工系の学問領域においても様々であり、概ねとはいえ、一律に0.6という数字を基準と示すことの妥当性に疑義が生じる。また研究水準の評価は「被引用数」のみで十全に行いうるわけではなく、学術振興会で行われているピア・レビューによる研究の質や価値の評価も重要であり、多元的な評価基準が必要である。
     多元的な研究評価の仕組みがない下で、この数値目標を達成するために、TOP10%論文数の生み出しやすさを基準にした研究領域の新陳代謝や、同論文の「生産性」を基準にした研究者の入れ替えへの圧力が高まることが懸念される。TOP10%論文数を多く抱えた「スター研究者」の採用の一方で、そうでない研究者の淘汰が進むことになれば、持続的で長期的な研究の発展の基盤が損なわれかねない。また地方大学等で特色ある研究を担いTOP10%論文を生み出している研究者の国際卓越研究大学への移動が促進されることになれば、国全体の研究の幅広いすそ野が失われることにもなりかねない。
     規模が小さくても国際卓越研究大学に匹敵している大学研究機関の評価においては、一人当たりのTOP10%論文数が目安となるとしても、その数値はより弾力的に設定されるべきであり、かつそれを補完するピア・レビュー等の多元的な評価基準も設けるべきである。

     法第4条第3項第2号で定める実績について、共同研究等における民間資金での負担経費合計額が5年平均で10億円以上か、または教員一人当たり概ね100万円以上を満たすこととされている。
     確かに国際卓越研究大学では、病院収入を除く大学収入の増加、いわゆる事業成長が年3%以上であることが求められているものの、民間資金規模の全体額ばかりか、教員一人当たりの資金規模も基準と示すことは、研究者個々人レベルの「マイクロマネジメント」となりかねない。大学が研究成果の社会還元を通じて事業成長を遂げていく、その中で民間資金の導入が必要だとしても総額を示すにとどめるべきである。「稼げる」研究領域への大学資源の集中、「稼げる」研究者とそうでない研究者の選別、稼ぐ能力に乏しい人文社会科学系の軽視につながりかねない等への懸念が指摘される中、規模の小さな大学においても国際卓越研究大学への可能性を示す配慮だとしても、一人当たり獲得資金額を基準とすることは弊害が多く、削除すべきである。

     法第4条第3項第7号に関連して、附属病院医療収入を除いた各年度収入から授業料・入学金ほか納付金、基盤的運営経費の合計額を除いた額が5年平均で20%以上の達成が求められている。
     事業成長3%達成の上で、学生負担軽減の観点から授業料等の値上げや運営費交付金の増額に期待することが困難であるなかで、外部資金の増収を通じて経営基盤を強化することが必要であり、一定の数値を基準とすることは必要であったとして、実態に合わない数値目標の設定は民間資金の増収への無理な圧力をより高めることになる。
    この結果、大学経営が付加価値を生み出す研究への予算配分を強め、短期的には事業収入増大に寄与しない基礎的研究の軽視を招きかねないと懸念される。このような数値目標の設定は、各大学の実情を考慮した弾力的な設定が可能となるように行われるべきである。

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    p.1 「一 国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化の推進の意義及び目標に関する事項 > 1 国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化の推進の意義」の箇所について

    ・国際卓越研究大学はあくまで「大学」である。大学は、「学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。」「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。」(教育基本法第7条)と規定されており、国際卓越研究大学についてもこの規定が遵守されなければならない。
    ・「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化の推進の意義」を定めるに際しても、あらためてここで規定された大学の意義、社会における位置づけを確認し、国際卓越研究大学に認定された大学において、学術の中心として高い教養と専門能力を培い深く真理を探究して新たな知見を創造する活動がその中心となるよう運営されなければならない。
    ・であれば、意義には例えば次のような文言が盛り込まれて然るべきと考える。すなわち「国際卓越研究大学として認定される大学は、国際的に卓越した研究の展開及び経済社会に変化をもたらす研究成果の活用を目指すことの前提として、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造する活動を基盤し、そのための体制を維持発展させることが求められている。」。

    p.2 「二 国際卓越研究大学の認定に関する基本的な事項」の箇所について

    ・省令(案)で求められた研究等の実績等のみで判断せず、変革への意思(ビジョン)やコミットメントの提示への評価を重視するとされている。国際卓越研究大学を目指した戦略性と計画の客観性、その実行能力を評価することは重要である。しかし11月の省令施行以降、数カ月の申請期間と審査機関を経て、大学ファンドの運用実績を勘案して国際卓越研究大学を段階的に数校選んでいくとされるが、一校につき、その運営費交付金に匹敵する数百億円を活用した最長25年に渡る事業計画を各申請大学は準備することになる。
    ・財政投融資を資金源とした大学ファンドの活用において、事業計画作成の準備期間は短く、そこで変革への意思やコミットメントの姿勢を過度に主観的に評価しかねない方針は、拙速で無理な事業計画の作成を招きかねない。あくまで事業計画の実現可能性を客観的に評価する原則をより明確にすべきであり、申請大学が準備期間を十分に確保できるように申請期間と審査期間を弾力化すべきである。

    p.5 「二 国際卓越研究大学の認定に関する基本的な事項 > 2 認定に関する基準 > (3)法第4条第3項第3号及び規則第2条第3項に関する基準」の箇所について

    ・先端的、学際的な領域への対応として、「若手研究者・女性研究者・外国人研究者の登用・活躍」が要件とされているが、こうした領域における研究者は有期労働契約が多いのが実際である。この点、省令(案)では「適切な処遇の確保」が謳われているところであるが、基本方針にも同様に明記すべきである。

    p.6〜p.7「二 国際卓越研究大学の認定に関する基本的な事項 > 2 認定に関する基準 > (6)法第4条第3項第6号及び規則第2条第6項に関する基準」の箇所について

    ・省令(案)への意見で記したとおり、法第4条第3項の認定基準の判断は、「大学」を単位しなければならないはずであり、同条同項第6号に関する基本方針についても、「大学」の状況が認定基準を満たすかどうかを判断するものでなければならない。
    ・にもかかわらず、この箇所では、役割分担の主体のなかに、「法人の代表者」「事業財務担当役員(CFO)」が掲げられており、法第4条第3項が規定する「大学」が認定判断の単位であることと矛盾している。
    ・「法人の代表者」「事業財務担当役員(CFO)」の記述を取り払い、「大学」内部の業務掌理の分担について求めるものとしなければならないはずである。
    ・法の定めに背いて基本方針を定めることは許されないと考えるが、それでも基本方針において「法人の代表者」「事業財務担当役員(CFO)」「教学担当役員(プロボスト)」を取り上げるのであれば、これら役職の法人と大学での位置づけは正確にしなければならない。法人の代表者及び事業財務担当役員は法人の役員であるが、教学担当役員は法人においてはひとりの役員であろうが、一方で大学においては「学長」の立場であるはずであり、けっしてプロボストではないはずである。「教学担当役員」につづくカッコ書きでの役職は「プロボスト」ではなく当該大学の「学長」とすべきである。

    p.14~p.15 「三 国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可に関する基本的な事項 > 3 国際卓越研究大学研究等体制強化計画の認可に関する基準 > ③ 自律と責任のあるガバナンス体制」の箇所について

    ・合議制の機関は法人の代表者や中長期の経営戦略等の重要事項の決定を行うとされている。その決定は大学の研究や教育に大きな影響を与えることを鑑みれば、合議制の機関の構成員の選考手続きは重要なものとなる。合議制の機関の構成員の選考に関して、学内の教職員の意向が充分に反映される仕組みを整備する必要があることを明記すべきと考える。 
    ・「二 認定に関する基本的な事項」についての意見で述べたとおり、教学担当役員は法人においてはひとりの役員であろうが、一方で大学においては「学長」の立場であるはずであり、けっしてプロボストではないはずである。「教学担当役員」につづくカッコ書きでの役職は「プロボスト」ではなく当該大学の「学長」とすべきである。
    ・「教学担当役員」は上述の通り当該大学の学長であり、「教学に関する事項の実質的な責任者」との位置づけは不十分、不適切であり、「当該大学を代表するもの」とすべきである。
    ・「教学担当役員」が綿密な連携を進める対象として、「大学内の研究者」とともに掲げられているのが「教員代表組織」となっている。法令において定められている教員組織を代表する組織は「教授会」であり(学校教育法第93条)ここでも「教員代表組織」ではなく「教授会」と明示すべきである。

    14:35 | 運動方針、声明、見解、要望等
    
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