【声明】「国公立大学・高専・大学共同利用機関で働く教職員の賃金改善を求める
~2024年人事院勧告を受けて」
2024年8月8日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
人事院は本日、国家公務員給与に関して、月例給については民間との較差2.76%を若年層を重点にしつつ全職員を引上げ、一時金については0.1月の引上げ、また、地域手当の広域化や配偶者手当を廃止して子の扶養手当を引上げるなどをする勧告を行った。
今回の勧告は昨年に引き続き月例給および一時金を引上げるとしたが、物価高騰や2024春闘の水準、また、政府が民間企業へ呼び掛ける賃金の引上げ、最低賃金の大幅な引上げなど、今般の社会経済情勢を鑑みれば、全世代にわたる更なる賃金の引上げが求められる。
国立大学等の教職員の給与水準は法人化以降も低く留め置かれていることは、国家公務員行政職(一)職員と国立大学の事務・技術職員などを比較したラスパイレス指数からも明らかであり、教員の給与水準は人材獲得で競合する大手私立大学より遙かに低い状況となっている。国⽴⼤学等の教職員は⾮公務員であり、賃⾦等の労働条件は民間労働関係法規に基づく労使交渉によって決定される。私たちは、こうした労使の関係性に基づいて国立大学等の各法人と賃金の引上げに向けた団体交渉に臨むものである。
他方で、国立大学等における賃金の引上げは単に労使関係だけではない構造的な問題を抱えている。多くの国立大学等において教職員の賃金の原資は運営費交付金に依るところが大きいが、この運営費交付金のうち教職員の賃金の主な原資となる基盤的経費は、法人化以降、大幅に削減されている。各国立大学等では、人員の削減を余儀なくされ、給与水準の参考とする人事院勧告水準から遅れをとる大学もあるなど、優秀な人材確保はおろか、必要な人件費すら削減を迫られる状況にある。また、運営費交付金の基盤的経費の削減と電力料金や研究資材の高騰への対応から当初配分される予定であった教育・研究・医療のための予算の削減・凍結が規模の大小を問わず多くの大学で行われ、教育・研究・医療に必要な施設・設備の整備もままならない状況にある。そして、これらの対応のために人件費もまた削減・凍結を迫られるという状況にある。
国立大学等は、国民が平等に高等教育を受ける機会の提供と、「市場」だけでは見出せない価値を創出するための研究活動をすることが重要な使命である。私たちは様々な自主的改革を通じて資金の獲得や社会の期待に応える努力を継続しているが、国立大学等のこうした営みを支える基盤的経費を確保することが困難な状況に至っている。2024骨太方針において「運営費交付金などの基盤的経費を十分に確保する」ことが盛り込まれたいま、あらためて運営費交付金の増額を求めると同時に、国立大学法人等においては教育・研究・医療の充実はもとより、社会経済情勢をふまえた賃金の引上げを求めるものである。あわせて、年俸制適用者についても社会経済情勢を反映した速やかな賃金の引上げを行うよう求めるものである。