内閣総理大臣 菅義偉 殿
2020 年 10 月 5 日
徳島大学教職員労働組合
中央執行委員長 今井晋哉
政府は 10 月 1 日、日本学術会議が推薦した会員候補者中 6 名を新会員に任命しませんでした。この件につき抗議し、その撤回を求めます。
学術研究において批判は本質的であり、既存の立場や学説を批判することで学問研究は進歩します。政府の方針に賛同する研究ばかりの学術界では、学問研究の深化はありえません。また、「日本の学術界は政府の意向に沿った研究ばかりしている」と諸外国から見られれば、領土問題、温暖化問題、感染症防止対策その他の社会的、科学的問題についての日本政府の主張には客観的根拠が乏しく説得力がないと見なされかねません。そうなれば日本の国益にとって大きな損失です。学術界の政府からの独立性は、短期的には政府の政策に反対するなど「権力者にとって目障り」であっても、長期的に見れば政府主張の客観性を担保するうえでも不可欠の要素です。
「選挙で選ばれた政治家は学問研究さえ無視して政策決定してもよい」などという思考は愚かであり、「選挙で選ばれた者には他の者はみな従うべきだ」などという思考は、「全権委任法」を成立させたナチスにも比すべき独裁主義・全体主義です。
以上の点に鑑み、今回の任命拒否は歴史に残る悪しき決定であり、即座に撤回されなければなりません。よろしく賢明な判断をお願いいたします。