《第28回教職員研究集会にあたってのよびかけ》
職場の大切な仲間の「使い捨て」を許さないたたかいに、教職員の幅広い連帯で立ち上がろう
―全大教は、有期雇用教職員の「雇い止め」撤廃、無期雇用転換促進に力を結集します―
2016年9月9日
全大教中央執行委員会
声明DL いま、国公立大学・高専、大学共同利用機関のどの職場でも、常勤の職員数に匹敵する、あるいはそれを上回る人数の事務補佐員、技術補佐員などの非常勤職員が、教育・研究・診療の現場での日々の業務の運営を支えています。常勤の教職員と非常勤の教職員とは、雇用条件に違いがあっても、職場で相互の信頼と協力の関係にたっておのおのの仕事を分担しあう大切な仲間であることに何の変わりもありません。
それにもかかわらず、大学法人等は、非常勤の教職員ひとりひとりが職場にとって容易に交換のきかない重要な業務の担い手になっている実情を直視しようとせず、将来の抽象的な「経営リスク」ばかりに注意を向けて、非常勤職員を「雇用の調整弁」のように扱うことを目的として、一定の勤続年数で一律に「雇い止め」することを当然視する傾向があります。しかも、有期雇用の労働者のこうした「雇い止め」や「使い捨て」に対する不安を解消し、安定雇用を実現する目的で立法された改正労働契約法による有期雇用契約の無期雇用への転換が2018年4月から始まることを理由に、逆に「雇い止め」「使い捨て」をより徹底化しようとする動きを強めている大学法人等が相当数にのぼっています。
常勤、非常勤を問わず、また教員、事務職員、技術職員、図書館職員、医療職員などの職種を問わず、職場をともにしている教職員多数の声をもって、こうした大学法人等の考えを変えさせ、「雇い止め」撤廃と無期雇用への転換をすすめるたたかいに、今こそ立ち上がろうではありませんか。
「定員外職員」時代より後退し、改正労働契約法の趣旨に逆行する各法人の対応
国公立大学・高専、大学共同利用機関の職場では、法人化前から長い期間にわたって、引き続く職員の定数削減と、それにかかわらず恒常的に増え続ける業務に対応する手段として、多数のいわゆる「定員外職員」を採用し、公務員制度の枠内で「常勤化を防ぐ」ための措置と称して、雇用の期間を形式的に「1日」とする、雇用中断日を設けるなどの、実情を糊塗するような対応が続けられてきました。
法人化により、各大学法人等は労使間の自治に基づき自由に労働条件を設定できるようになり、「常勤化の防止」などの公務員制度による縛りからは解放されました。しかし、民間の労働法制上意味をなさないことが明らかな雇用中断日の廃止などは行われたものの、雇用契約を繰り返し更新することで「契約更新の期待権」が発生することを防ぐことを意図して、雇用契約(多くは1年以内)の更新回数や上限年数を設定し、フルタイム勤務またはパートタイム勤務の有期雇用教職員について、それらの更新回数や上限年数による「雇い止め」を行なおうとする大学法人等が多数にのぼりました。しかし、それぞれの職場での組合の粘り強い取り組みなどにより、「雇い止め」の年数の緩和や適用除外の拡大、再雇用の拡大など、「雇い止め」「使い捨て」をさせない一定の改善もかちとられてきました。
日本社会全体で有期雇用などの「非正規雇用」で働く労働者が増え続けるなかで、こうした一方的な「雇い止め」など有期雇用契約ゆえの不利益や不安定さの解消をはかるための法律として、2012年に改正労働契約法が成立し、2013年4月から施行されました。
この法律により、有期雇用契約を通算5年を超えて反復継続した場合は労働者からの申し出により期限の定めのない雇用契約に転換することとされました。また、雇用契約更新の期待権が認められる場合には、雇用契約期間の満了を理由とした労働者の意に反する雇用の打ち切り(雇い止め)は無期雇用労働者の解雇と同様、社会通念上の相当性など厳格な要件が求められることが明記されました。
日本社会で有期雇用労働者を働かせるすべての使用者には、法の趣旨に従い、恒常的・継続的な業務に従事する労働者をいつまでも不安定な地位におくことなく、使用者としての責任を果たす対応が求められています。公共の機関であり教育機関である国立大学等においてもこの使用者としての責務があることは当然であり、かつ、その責務を果たすことで範を垂れることが求められます。
現在、多くの大学法人等で進められつつある、無期雇用への転換の権利が発生する前にほとんどの非常勤職員を「雇い止め」にするために、5年を超えて雇用契約を更新できる要件を厳しいものにするような運用、また、5年を超えた雇用契約更新の有無は勤務先の部局の判断にゆだねるとすることによって、無期雇用に転換した場合の人件費の調達を部局の責任とすることで、実質的には多くの部局が5年を超えた雇用契約更新を回避せざるを得ない状況を作り出すような運用は、法の趣旨に照らしても、非正規雇用の弊害解消という社会的要請に照らしても、強く指弾されるべきものです。
その上、働き続けることを望む非常勤職員自身の権利に照らしても、そしてまた非常勤職員の持てる能力の発揮によって職場での業務が回っている現状に照らしても、なんらの合理性もありません。
職場に根ざす労働組合としての存在意義を今こそ発揮しよう
労働組合は、組合員がお互いの権利を守るための結合体であると同時に、民主的な運営が行われる職場を実現するための母体でもあります。それぞれの国公立大学・高専、大学共同利用機関の職場で、組合が先頭に立って有期雇用職員の一律雇い止め、「使い捨て」に反対する声を組織することは、労働組合としての存在理由にかかわる大きな課題です。
全大教は、有期雇用教職員の「雇い止め」撤廃、無期雇用転換促進をもっとも重点的な取り組みの一つとして位置づけ、学内外の世論形成、「雇い止め」の対象とされている当事者の把握と意向聴取、「雇い止め」阻止のために考えられる交渉戦術など、取り組み方針と討議資料を策定し、すべての単組に対して取り組みを提起します。
この問題についての認識を、これに関係する分科会・学習会への参加者だけでなく、すべての教研集会参加者が持ち帰っていただき、単組での取り組みにつなげていただくことを訴えるものです。