【声明】「国立大学の授業料の大幅引上げを危惧します
今こそ、高等教育の無償化、奨学金制度の充実を」
2024年6月3日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
国立大学の授業料について、中央教育審議会において委員から150万円に引上げるべきとの提言がされ、さらに、東京大学が授業料の引上げを検討していることが報道されています。すでに首都圏の数大学では授業料の引上げが行われており、今後、国立大学の授業料引上げが多くの大学に広がることが危惧されます。
国立大学の授業料は、標準額を約54万円として各大学において標準額の20%までの増額が認められており、多くの国立大学では標準額となっています。この他、入学金約28万円に加えて、近年では入学に際して必携となるパソコンやオンライン授業に対応するための環境整備など、学生生活を始めるために必要な費用は増加しています。奨学金を受給する学生は国立大学で約4割、国公私立全体では約5割に上ります。貸与型奨学金の場合は返還の負担が問題となっており、返還の負担を考えて進学や奨学金の受給を躊躇する学生も存在します。日本の高等教育段階における公財政教育支出はOECD平均から遅れをとっており、私費負担の割合もOECD平均と比べて高い状況にあります。大学教育を受けるにあたっての学生と家計の負担は現在でも決して少なくありません。
大学教育は学生個人の利益となるだけではありません。GDPの増加や税収の増、公的支出の抑制、経済格差の是正による社会の安定など、大学教育は未来への投資であり、その受益者は社会全体です。大学における教育研究が高度化・多様化するなか、そのための経費は学生に求めるのではなく、憲法が規定し、日本も批准している国際人権規約も認める「教育を受ける権利」の下、今こそ、国の責任において、高等教育の漸進的無償化と奨学金制度の充実にむけた動きをいっそう推進していくことが必要です。
私たちは、大学教育の役割と学生への支援の必要性について社会全体の理解を広げるべく、引き続き努力していく所存です。