獣医学部設置をめぐる大学設置認可行政の公正性確保を求める
学校法人加計学園による岡山理科大学獣医学部設置について、2017年1月に国家戦略特区を活用した計画が認定され、その構想に基づく大学設置認可の審査が始まっている。
この件に関わって、文部科学行政の中で厳正に取り扱われてきた大学設置における量的規制が、安倍晋三首相をはじめとする官邸周辺からの圧力で、特定事業者のみを優遇する方向で歪められているのではないかとの疑念が持たれている。
今回の問題は、獣医師という専門職の養成にかかる問題である。需要見積もりが非常に重要である。現在定員割れをおこし撤退が相次いでいる法科大学院は、その見積もりが失敗した例であり、これを教訓とすべきものである。
ところが、今回の加計学園の問題は、官邸が、国家戦略特区制度を活用して、従来新設を認めてこなかった獣医学分野での学部新設を認める方向で、日本獣医師会の反対、慎重論を押し切ったことが問題であり、文部科学省内の文書により、総理大臣周辺からの圧力があったことが示されている。しかも、規制改革の要件等を特定の学校法人に適合させることによって、その便宜を図ったのではないかとの疑念まで持たれている。
国家戦略特区の指定という制度をてことして強引に設置を推し進めようとしていることは問題である。特区制度を活用するとしても、設置の目的、目的と手段との関係などについて疑念が挟まれる余地がないように、説明責任があるというべきである。国民の疑念にもかかわらず、官邸の力で押し切ろうとするなどは、民意を踏みにじるものであり、許されるものではない。
2014年安倍内閣のもとでの内閣人事局制度の創設以来、省庁の幹部人事への官邸からの関与が強化されたことによって、忖度による行政と責任を取らない政治とによる無責任体制の歪みが国民の前に明らかになっている。さらには、関連する事実関係を社会に広く明らかにした前事務次官に対して、政府から人格攻撃が行われるなど、批判に答えることなく威圧により問題を隠蔽しようとする体質には強い危惧を持つ。
安倍政権においては、森友学園の問題でもこの加計学園の問題と同様に、政治による圧力により公正・適正な行政が歪められる事態が発生している。安倍政権は、これら計画を一旦白紙撤回し、こうした問題が起こった構造を国民の前に明らかにするとともに、その責任を明確にすべきである。それによって大学設置認可を含む文部科学行政、行政一般の公正性を確保することを求める。