1.国立大学は国民の負託に応える研究教育機関として発展していかなければなりません。そのために必要な国立大学法人のガバナンスを考える上で、大学運営が学問の自由に立脚した教職員の自治的参加に基づくことが重要だと私たちは考えます。
「国立大学法人法」改正案における学長選考のあり方への見解
2021年4月14日、全国大学高専教職員組合中央執行委員会
1.国立大学は国民の負託に応える研究教育機関として発展していかなければなりません。そのために必要な国立大学法人のガバナンスを考える上で、大学運営が学問の自由に立脚した教職員の自治的参加に基づくことが重要だと私たちは考えます。その意味で、知の共同体としての大学運営に責任を負う学長の選考、そして学長に対する「牽制機能」の発揮において、大学の自治の担い手としての教職員が積極的な役割を果たすことが欠かせません。これらの観点から、近年進められてきた「学校教育法」改定による教授会の形骸化、学部長などの任免権を含めた学長への権限集中、そして学長選考会議の不透明な運営などに、現在の問題の真の原因があると私たちは考えます。
2.今国会で「国立大学法人法の一部を改正する法律案」が提出され、その中で学長選考会議を「学長選考・監察会議」に改編するとともに、監事の権限強化によって、学長に対する牽制機能の強化が予定されています。
その内容は、(1)少なくとも監事のうち1名は常勤とし 、監事が「学長に不正行為や法令違反等があると認める」ときは、学長選考・監察会議などに報告すること 、(2)監事から上記報告を受けた際、または「学長の解任要件に該当するおそれがあると認める」際に、学長選考・監察会議が「学長に職務の執行状況について報告を求める」権限を与え 、(3)学長選考・監察会議の委員に学長を加えることを禁じ 、なおかつ(4)理事は教育研究評議会において選出された場合のみ委員になることを認める とするものです。
3.上記の提案は、現在、学長選考会議委員に経営協議会と教育研究評議会からそれぞれ同数が選出される上に、学長と理事が学長選考会議委員の3分の1までを占めることができるという、現職の学長に優位な学長選考会議の委員構成を改め、なおかつ学長権限の不正常な行使に対して監事と学長選考会議の牽制機能を強めようとするものです。これらは、学長選考会議に対する学長の影響力が高まる中で学長選考手続が形骸化し、それにともなって学長権限が肥大化し、不正常な運営の大学が増えている、という事態への対応を図るものと思われます(近年の国立大学では、不透明な手続きによる学長任期の延長や学長候補者の絞り込み、教職員の意向投票の結果を無視した形での学長候補決定、などの事例が頻発しています)。
4.しかしながら上記の改正案も「牽制機能」を強化するとしつつ、学外者が半数を占める学長選考・監察会議と監事の権限強化だけが図られ、学内からの健全な意見表明に基づく大学運営という観点を全く欠いています。学長選考・監察会議による牽制機能だけではなく、学長および学長選考・監察会議に関する情報開示やリコールの制度化など、教職員による牽制機能の確立が必要です。さらには教授会を基盤としつつ広く大学の構成員が参加する大学運営の実現を含めた、大学自治に基づく牽制機能の強化こそが必要であると考えます。