2020年12月18日
山梨大学教職員組合
山梨大学教職員組合は、今般の日本学術会議任命拒否の問題について、菅義偉首相による任命拒否に抗議するとともに、以下のことを求めます。
(1) 日本学術会議が推薦した6名の任命を迅速に行うこと。
(2) 日本学術会議が推薦した6名を、菅義偉首相が任命拒否した理由を明示すること。
日本学術会議任命拒否の問題は、本年10月1日付けで任命される予定であった第25期の会員候補者の中から6名の任命を菅義偉首相が拒否したことに端を発します。日本学術会議法は、本学術会議の推薦に基づいて首相が会員を任命する、と規定しています。この首相の「任命」は「形式的任命」とされ、首相は日本学術会議の推薦のとおりに任命を行い、首相には実質的任命権はない、と解釈されてきました。政府自身も、この解釈を認める答弁を国会において行っているところです。ところが、菅首相の説明によると、2016年に解釈の変更を行い、それを踏まえて今般の任命拒否に至ったということです。2016年の解釈の変更は、国会等の場で十分議論を尽くしたうえでの変更ではなく、政府内部で――いわば、密室で――議論が行われ変更が行われたということです。
日本学術会議は、戦前に大学や学問に政府が介入し、大学や学問が戦争に加担したことを反省して1949年に設立された国の特別の機関です。このような機関に、恣意的に政府が人事権を行使し、その運営に介入することは、憲法が保障する「学問の自由」を侵害する行為になりかねません。これは、「学問の自由」の侵害にとどまらず、「思想及び表現の自由」などを委縮させ、国民の基本的人権の抑圧につながるものです。
また、今般の任命拒否の問題は、他人ごとではありません。本学では、「学長の任期は、二年以上六年を超えない範囲内」と定める国立大学法人法の趣旨に反する規程の変更が、学内で十分に議論されることなくひっそりと――まさに、密室で――おこなわれました。これにより、教職員の意向投票を経ることなく学長の任期を延長することが可能となり、実際、現学長の更なる任期延長が、意向投票も経ず、学内で十分に議論されることもなく、決まってしまいました。(現学長の任期は、法律の定める範囲を超えて8年にも及びます。)
日本学術会議会員の任命拒否の問題も、学長の任期延長の問題も、法律の趣旨に反して、権力者が密室で法律の解釈や規程の変更を強行し、自分たちに都合の良い状況を作り出そうとしている点で全く同じであると考えます。これらの行為は、いずれも、民主主義をないがしろにし、本来、自由で闊達な意見交換が行われるべき「大学という場」を破壊へ導く蛮行であると言わざるをえません。
このことから、山梨大学教職員組合は、菅首相による今般の任命拒否の問題について強く抗議するとともに、日本学術会議が推薦した候補の速やかな任命及び任命拒否の理由の明示を求めます。
以上