この法案は、第4条3項6号において国際卓越研究大学の認定基準にガバナンス体制を規定するとともに、附則第3条にみるように国立大学法人の経営管理体制改革を求めるなど、今後予定される国立大学法人法改正にも大きな影響を与えるものであり、国際卓越研究大学に選定される一部の大学にのみ係るものではなく、今後の国立大学、ひいては我が国の大学政策全体に大きな影響を及ぼすものです。
「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための
体制の強化に関する法律案」の慎重かつ徹底的な審議をお願いします
2022年4月19日
衆議院文部科学委員会・参議院文教科学委員会宛
全国大学高専教職員組合
中央執行委員長 鳥畑 与一
「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案」が今週22日の衆議院文部科学委員会で審議入りし、早ければ来週27日に採決と伺っております。
私ども全国大学高専教職員組合は、この法案のままでは、大学ファンド運用益の活用が決して「我が国の大学の国際競争力の強化及びイノベーションの創出」につながらないのではないか、また、法案で定めようとされている文部科学省令・文部科学大臣の定める基本方針や認定基準等が教育研究現場の実態に即したものとなるかどうかに強い懸念を持っております。この法案は、第4条3項6号において国際卓越研究大学の認定基準にガバナンス体制を規定するとともに、附則第3条にみるように国立大学法人の経営管理体制改革を求めるなど、今後予定される国立大学法人法改正にも大きな影響を与えるものであり、国際卓越研究大学に選定される一部の大学にのみ係るものではなく、今後の国立大学、ひいては我が国の大学政策全体に大きな影響を及ぼすものです。
この間、私ども全国大学高専教職員組合の意見に耳を傾けて頂いたことに改めて感謝を申し上げるとともに、以下の事項について審議を通じて議論を深めて頂きますよう重ねてお願いいたします。また、議論を深めるためにも、参考人質疑を行い、専門家及び現場の大学教職員の知見や声を聴取して頂く機会を設けてくださるようお願いいたします。
■第2条に定めようとしている、国が、「研究者の自主性の尊重その他大学における教育及び研究の特性に常に配慮しなければならない」とする規定は大変に重要であり、これが法律の運用にあたって大原則として実効性のある形で遵守され続けられなければならないと考えています。
■第4条3項3号では、国際卓越研究大学の認定の一つの基準として「先端的、学際的又は総合的な研究の実施に係る教員組織及び研究環境」の整備等を挙げ、法案に先立つ総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)や文部科学省有識者会議での議論でも、非常に限られた少数の大学、それも事業成長3%を達成できる見込みのある大学のみが認定される方向でした。こうした方向性は、日本の研究をリードしてきた大学での学術領域の偏りを促し、大学間に極端な格差をもたらすなど、日本の大学と学術に深刻な問題を引き起こすものと考えています。
■第4条3項6号では、国際卓越研究大学の認定の一つの基準として「研究に関する業務の執行と管理運営に関する業務の執行との役割分担が適切に行われていること」等を求めることとされており、経営と教学の明確な分離が求められています。CSTI等での議論では、法人の最高意思決定を学外者が相当数を占める「合議体」が行うことが必要だとされており、今後この方向で省令、基本方針、認定基準等が定められていくと考えられます。大学の活力は、構成員の自由闊達な議論と理解をベースとすることによって育まれており、企業型のトップダウンの体制は馴染みません。国際卓越研究大学のすべてに画一的なガバナンス体制が求められることがないような制度設計が必要です。
■法案全体を通し、国際卓越研究大学の基本方針や体制等に係る認定基準等については、今後の行政的な決定に委ねられています。その決定にいたる過程では、第2条の「研究者の自主性の尊重その他大学における教育及び研究の特性に常に配慮」の規定を遵守し、公正かつ透明な議論が必要です。そのためにそのプロセスでも大学関係者等の意見を聴取し、また議論の公開が欠かせません。
以上