かねてから運営費交付金を減額され続けてきていた大学の運営はさらに厳しいものになっています。こうした運営の厳しさが大学教員の「働き方」に大きな影響を及ぼしています。

　そうした中で、2013年に制定された「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」に定める無期転換の特例である「10年ルール」をめぐる問題や、2022年の大学設置基準改正に伴う専任教員から基幹教員への変更、2023年4月からの国家公務員法のもとでの定年延長を受けた国立大学法人における定年延長など、近年、教員の「働き方」や教育・研究の基盤を大きく変える法令の改正が相次いでいます。 

　活動方針の柱は、以下の4点です。

①教員の賃金・労働条件の改善に向けて：大学改革による雇用形態の多様化、業績評価の規定力の増大（特に、任期制・年俸制の導入等）や「働き方改革」に伴う賃金・労働条件の実態把握を行ない、特に若手・中堅層の多くの部分を占める不安定雇用の実態と声を集約する取り組みを進めます。

②非常勤講師の賃金・労働条件の改善に向けて：非常勤講師の労働条件について、この間の法令改正に伴う制度の脱法的な取扱いに反対するとともに、賃金・教育研究条件をはじめとする処遇の改善を目指します。

③定年延長および人事抑制や新たな雇用形態に関する問題点の把握：国家公務員法のもとでの定年延長を受けた国立大学法人の定年延長をめぐる問題、実務家教員などの採用の拡大に伴う雇用の多様化など制度改正への対応の実態を把握するとともに、その対応策について検討していきます。

④「10年ルール」に伴う雇い止めの問題への対応：本件特例に伴う雇い止めの実態を集約し、必要な対策について検討していきます。

　

　これらの方針のもとでの活動を通して、労働条件や教育・研究環境を中心とした教員の働き方の現状と課題について調査するための「教員アンケート」を2024年度に実施するための準備作業に取り組みます。

1）大学の 雇用におけるジェンダー平等の視点から見落とされたところがないかどうか議論する場を持つ。

2）部員獲得のための働きかけを継続する。また教職員の多忙化に対応できる女性部の活動のあり方を検討する。

3)コロナ禍の時から新しいときを迎え、どのようなジェンダ―に関する問題があったか、そしてどのように向き合うか、話し合う。

　教研集会においてはオンライン昼食会で、上の1、2、3について具体的に話し合いたいと思います。

　3年前に高専機構が主導して、「海事系高専3校に拠点化、拠点校に練習船建造」をという構想があがりました。しかし、海洋基本法や海洋基本計画に沿った「日本人船員確保・育成」の理念に反した「拠点化して削減」では、「日本人船員を確保する」とした国策にそぐわない、と反対され、高専機構側はこの構想を一旦断念しました。その後、高専機構は「各校1隻を建造」という案で文科省にあげ、つい2020年度に行った全大教との会見で文科省担当者は、商船高専での代船建造に向けて予算が付いたこと、まずは大島商船高専の大島丸から措置されることを明言しました。そして実際に予算の付与があったことが現場からの報告で確認されました。長年の組合活動がもたらした大きな成果と言えるでしょう。

　しかし、海事系大学が中型船、小型船を減船（つまり、乗り組み員のポスト削減）して代船建造を果たしてきた流れからして、「何も血を流さない、各校1隻案」がこのまま通るかまだわかりません。会見で文科省担当者は、「共通仕様を検討していただく」としており、何らかの合理化は十分に予想されます。途中で方針が変わったり、「船は作るが船員の人員に手を付ける」といったことにならないよう、警戒してなければなりません。加えてこのところの資材価格上昇により、建造費が当初予定より膨らむ懸念が生じています。これを理由に代船建造計画が悪い方向へ見直されることがないか、注視する必要があります。また、エネルギー価格の上昇が、練習船の運航にも影を落としています。燃油代を節約するために、これまでは出港して沖合で行っていた実習を、接岸したままで行う例が報告されているのです。教育環境が損なわれており、改善が必要な事態が生じています。

　このたびの代船建造が決まる過程で、練習船には災害時の救援機能を果たす存在としての位置づけも与えられました。それだけ海事職がやる仕事が増えたと言うことでもあります。この点についてどのような手当がされるのか、どのような仕事が生ずるのか、まだ不透明です。場合によっては一般の人々を船に収容することもあり得、感染対策も相まって現場の海事職は難しい判断を迫られるでしょう。

1 交流

　公立大単組相互の交流を深めること、特に本年秋の全大教の教研集会への参加と、協議会主催の部会を設けさせてもらうかどうかを積極的に検討することが決定されました。また、引き続き、協議会の総会にあわせての交流会開催のほか、インターネット上の全大教掲示板を通じて交流、情報共有を続けます。 

2  課題の検討

　公立大学への各地方自治体の運営費交付金の不十分さ、特に、地方交付税の積算における基準財政需要額の単価に見合っているかどうかという問題への取り組みが引き続き課題であることも確認されました。

　具体的な重点取り組み事項は、以下の通りです。

①同一労働同一賃金、不合理な待遇差の解消に向けた取り組み

②定年延長に関する取り組み

③ウィズコロナにおける教職員の就業に関する要求

④全国的な組織拡大・強化運動の検討

　次に、継続的な取り組み事項としては、

①高専に対する運営費交付金の効率化係数撤廃を要求

②賃金をあげ、ラスパイレス指数の格差を改善すること

③全ての高専において超過勤務手当の支払いが労働基準法に則った形で適性に行われるよう高専機構に求めること

④高齢者雇用安定法に基づいて、希望のある教職員はすべて再雇用すること

⑤人件費削減策としての「定年退職教員の1年間不補充」や、「教員の人員枠整理」の早期撤廃を要求すること

⑥待遇改善（業務に必要な公用車を手配、昼休みの1時間確保）

⑦有期契約労働者の正職員化

　令和4年度人事院勧告を踏まえたと使用者側が称する給与改定については、4月に遡及して勤勉手当と一部年齢層の月例給が引き上げると言うものであったので、労働者側は改定を妨げはしませんでした。一方で、次の二つを給与改定に盛り込むよう求めました。

・そもそも高専機構教職員の給与水準は同業同職種の給与に比して低いことから、人勧を越える引き上げをおこなうこと。

・勤勉手当の引き上げではなく、期末手当の引き上げを行うこと。

　しかしながら使用者側は我々の要求を容れず、使用者側提案で妥結となりました。

　また、2023年1～2月にかけて、定年年齢引き上げをめぐる交渉を行いました。現行定年年齢を越えた年齢において給与が七割に減じられることと職務の釣り合い、「役降り」者が非管理職ポストを消費することで下位ポストの者の昇進が遅れる懸念があること、が焦点でした。これにまつわり労働者側は次の二つを要求しました。

①希望降任制度を定めること(焦点前者に対応。労働側は当然、給与七割減そのものに反対しましたが、それに引き続いて事前の提案として要求)

②「役降り」者の「役降り」後のポストとしては、通常の昇進ラインから外れたポストを設けてそれを与えること(焦点後者に対応)

　その結果、使用者は①の要求を容れましたが、②は拒否しました。労働者側として不満が残るものでしたが、低年齢の引き上げは基本的に必要なものと考え、妥結したものです。なおこの交渉に際しては、本交渉前の予備交渉や加盟単組とのオンライン会合を複数回行いました。このおかげで、労働者側としてしっかりと考えをまとめて交渉に臨めたと感じております。

　更に、秋には高専設置基準の改定が行われました。これに関しては「基幹教員」の考え方や、研究室の扱いなど多々問題があり、労働者側としてパブリックコメントも文科省へ寄せたところです。中でも特に問題であったのは、専攻科設置基準の策定が事実上、放棄された点でした。これはまさに、「専攻科という組織へは恒常的な人員枠と予算を付けない」と宣言したのも同然の措置であり、教職員の長年にわたる期待を裏切るものでした。この件については、11月の文科省会見席上にて、同省高等教育局に対して厳重に抗議し、見直しを求めています。

　すべての高専では過半数労働者代表が選出され、労働者の代表として変形労働協定や、時間外労働協定の締結、また高専機構就業規則が変わるたびに意見書の提出を求められています。全大教高専協議会は、たとえ未加盟であったとしてもこれら過半数代表者に向け、機構本部との団体交渉の経過や交渉内容について情報を共有し、互いに信頼関係を醸成しながら、ゆくゆくは、組合結成や、加盟単組の拡大につなげて行きます。また、公立や私立の高専とも連携を強め、全国高専労働者の要求の前進を図ります。