2025年8月7日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
人事院は本日、国家公務員給与に関して、月例給については官民較差3.62%を3年連続で若年層を重点に平均で15,014円引上げ、一時金については0.05月の引上げる勧告をした。この際、人事行政諮問会議の提言を受け、比較対象企業規模をこれまでの50人から100人に引上げ、本府省については1,000人規模の大企業を比較対象とした。また、職務・職責をより重視した給与体系を含む「新たな人事制度の構築」について2026年に骨格を示し、2027年に報告するとしている。
今回の勧告は昨年に引き続き月例給および一時金を引上げるものであるが、民間の賃上げ水準には及んでいない。また、民間における初任給の動向や、公務における人材確保の課題をふまえて初任給において相応の引上げを行うとともに、若年層に重点を置きつつ、中高齢層においても昨年を大きく上回る改定となっている。職務・職責に見合った賃金体系や物価高騰が続く社会経済情勢、さらに中央最低賃金審議会が最低賃金の大幅な引上げを答申したことを鑑みれば、全世代、全職種にわたる更なる賃金の引上げが求められている。
国立大学等の教職員の給与水準は法人化以前から国家公務員行政職(一)職員に比べて低く、今も、国立大学等の事務・技術職員のラスパイレス指数にも表れている。教員においても人材獲得で競合する大手私立大学より給与水準は遙かに低い状況となっている。
国立大学等の教職員は⾮公務員であり、賃金等の労働条件は民間労働関係法規に基づく労使交渉によって決定される。私たちは、こうした労使の関係性に基づいて国立大学等の各法人と賃金の引上げに向けた団体交渉に臨むものである。
他方で、国立大学等における賃金の引上げは単に労使関係だけではない構造的な問題を抱えている。多くの国立大学等において教職員の賃金の原資は基盤的経費である運営費交付金に依るところが大きいが、運営費交付金は法人化以降、大幅に削減されている。これまで各国立大学等では概ね、人事院勧告に準拠するという方針が取られてきたが、運営費交付金が削減されているなか、大学運営において人件費や教育・研究費の確保の限界に迫られ、人事院勧告の水準を維持することが困難な大学も出てきている。現に、昨年度は賃金改善を見送る大学まで生じた危機的な状況となっており、優秀な人材確保はおろか、教育・研究・医療の維持に必須とする人件費すら削減を迫られている。エネルギーコストや教育・研究・医療等に要する資材の高騰に、当初配分される予定であった教育・研究・医療のための予算の削減・凍結が規模の大小を問わず多くの大学で行われ、必要な施設・設備の整備もままならない状況にある。これらの対応のために更なる人件費の削減・凍結を迫られるという、負の連鎖の渦中にあって、国立大学協会や国立大学病院長会議からも基盤的経費の拡充なくしては大学・附属病院の運営に行き詰まる状況であると発せられている。
国立大学等は、国民が平等に高等教育を受ける機会の提供と、「市場」だけでは見出せない価値を創出するための研究活動をすることが重要な使命である。私たちは外部資金の獲得や社会の期待に応える努力を継続しているが、国立大学等の日常運営を支える基盤的経費を確保することが困難な状況に至っている。そもそも、国立大学等の法人化以降、教育・研究・医療の高度化への対応や社会保険料や消費税率の引上げなどにより必要経費は大幅に増加している。物価や人件費の上昇が見込まれる社会経済情勢へと変化するなか、2025骨太方針において「物価上昇等も踏まえつつ運営費交付金や私学助成等の基盤的経費を確保する。」と昨年以上に踏み込んだ内容が盛り込まれた今、あらためて運営費交付金の増額を求めると同時に、国立大学法人等においては教育・研究・医療の充実はもとより、社会経済情勢をふまえた賃金の引上げを求めるものである。