事業廃止問題に関する要望書
―事業廃止は国立大学法人の教育・研究・医療に重大な支障―文部科学大臣宛
要望書 2010年6月11日
文部科学大臣
川端 達夫 殿
全国大学高専教職員組合
中央執行委員長 中嶋 哲彦
独立行政法人 国立大学財務・経営センターの事業廃止問題に関する要望書
―事業廃止は国立大学法人の教育・研究・医療に重大な支障―
さる4月28日、行政刷新会議の事業仕分けにより国立大学財務・経営センターの重要な事業について、いずれも事業廃止の評価が行われました。
国立大学財務・経営センターの事業廃止は、下記の通り大学附属病院をはじめとする国立大学法人の教育・研究・医療に重大な支障を及ぼすものであり、看過できるものではありません。
貴職に対して、国立大学全体の教育・研究・医療の発展に資する立場から、国立大学財務・経営センター事業の充実がはかられるよう特段のご尽力をお願いする次第です。
記
1, 国立大学の施設費貸付事業及び承継債務事業について
(1) 施設費貸付事業について
財務・経営センターの貸付事業を廃止し、各法人が民間金融機関等から個別に借入を行う制度にすると、法人の財政力に格差がある現状では、国立大学法人によっては、低利・長期の施設費の借入が困難になり、附属病院に期待されている使命を果たすことができなくなり、我が国の医学・医療に重大な支障が生じることは必至と言わざるを得ません。
また、各法人が財政融資資金から借り入れる場合であっても、個々の法人毎に借入のための業務や債券発行などの新たな業務の発生によるコスト増が生じることなどを考えると、国立大学財務・経営センターが一括して借り入れ、各法人に貸付ける現行の仕組みの方が、スケールメリットがあり、効率的であると考えます。
(2) 承継債務の償還事業について
国立大学の債務は法人化に伴い、国立大学財務・経営センターが承継し、実質的には国立大学法人が債務を負い、センターを通じて国に計画的に返済しています。
この償還事業を、個別の国立大学法人が行うことになれば、民間金融機関等から資金融資を受け、債務を返すことになりますが、国立大学法人の財政力により、利率に差が生じることが予測され、運営費交付金の減額によって現在でも厳しい法人経営、教育・研究・医療への深刻な負荷をもたらすことになります。また、財務・経営センターの一括事業によるスケールメリットがなくなり、個々の法人の償還事務負担により、効率性という点からも問題です。
2, 施設費交付事業について
国立大学法人の施設整備費は、文部科学省の試算によれば、年間2,200億円が必要とされていますが、平成22年度予算においては、文科省の施設整備費補助金463億円、国立大学財務・経営センターの交付金56億円、附属病院の長期借入金388億円の合計907億円にとどまっており、所要額の半分以下しか措置されていません。
このような現状にある中で、国の厳しい財政状況の下、年々補助金が減額されており、さらに安定的な財源であったセンターの交付金までもが廃止されることは、国立大学法人にとって大きな打撃となります。
3, 調査及び研究と経営相談事業について
調査研究事業によるすべての国立大学法人の財務・経営に関するデータの蓄積や分析、大学病院の財務・経営分析、先進的な改善事例の集積を踏まえた経営相談事業は、各法人の経営戦略の構築や経営改善の実施に当たり、他法人等のさまざまな情報を獲得する貴重な情報源となっています。
これらの調査研究等を各法人で行うことやコンサルタントの活用を各国立大学法人でばらばらに行うことは、国立大学全体として見た場合非効率的であると思われます。国立大学財務・経営センターが蓄積してきた大学の調査・研究、経営等に関する知見を活用することが必要と考えます。
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