(緊急声明)政府による日本学術会議会員の任命拒否に抗議し、
その撤回を求めます
2020年10月3日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会
政府は10月1日、日本学術会議が推薦した会員候補者中6名を新会員に任命しませんでした。
日本学術会議は、政府から独立して職務にあたり(日本学術会議法(以下、「法」という。)第3条)、また政府に勧告をすることができる(法第5条)学術機関として規定されています。日本学術会議の会員は、学術会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(法第7条第2項)となっています。会員の任命に関する従来の政府の見解は、「内閣総理大臣が形式的な任命行為を行う」「内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を解釈しておる・・・内閣法制局に起きます法律案の審査のときにおきまして十分その点は詰めたところでございます」(昭和58年5月12日、参議院文教委員会。日本学術会議法一部改正時の政府答弁)というように、総理大臣による任命は形式的なものであるというものでした。そして現に、これまで学術会議の推薦に対する任命拒否は一切行われて来ませんでした。このことは例えれば、日本国憲法第6条で「天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する」と規定されているのと同様であり、この「基づいて」という表現は、日本学術会議による推薦あるいは国会による指名が総理大臣や天皇の任命権を拘束することを意味するものです。今回の件に関し、政府は法定された任命権の行使であるとしていますが、従来の見解とは異なる措置を採ったことについての法解釈上の正当性の主張や、その理由について一切説明を行っていません。説明なしに法解釈を変更し恣意的な運用を行うことは、法的安定性を著しく損なう行為です。
日本学術会議が政府の介入を受けることなく自由に活動できることは、憲法23条で定める学問の自由が保障しなければならないもっとも重要なことのひとつです。そして学問の自由は、個人的研究のレベルのみならず様々な組織的表現を通じて行使されるのであって、今回政府が行ったことが放置され、うやむやにされるようなことがあれば、日本における学協会や大学などといった様々な組織で行われている学術活動全般に大きな否定的影響を及ぼすものです。
私たち国公立大学、高専、大学共同利用機関で教育研究活動を行う教員・職員で構成する全国大学高専教職員組合は、政府による日本学術会議会員の任命拒否に強く抗議します。政府に対し、速やかに今回の決定に至った理由を説明するとともに、任命拒否の撤回を行うよう求めます。