2020年10月7日
東京都立大学労働組合 中央執行委員会
10月1日、日本学術会議の第25期新会員候補105人のうち6人が、菅義偉首相から任命されませんでした。1983年の関連法改正にあたり、首相による任命の性質は、学術会議側の推薦を形式的に承認するに止まることが確認されており、今回の任命拒否は違法の疑いがあります。任命拒否にいたった経緯を説明するとともに、6人を任命するよう求めます。
この一週間の報道をみると、政府による学術会議の人事への介入は、菅首相の思い付きではなく、長期的・計画的に、着々と進められてきたことが分かります。国立大学等への運営費交付金の削減、猫の目改革による教職員の異常な繁忙化、軍事研究への誘導などとともに、学術研究を政府の都合で歪めようとする策動は止まるところを知りません。
日本学術会議は憲法第23条「学問の自由」を実質化するための重要な機関です。日本学術会議法の前文にあるように、学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、1949年1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。
戦前は、1933年滝川事件、1935年美濃部事件、1937年矢内原事件など、国家権力による学問弾圧が執拗に繰り返されました。いずれのケースも政治指導者にとって耳の痛い要素を含む学説に対する弾圧でした。そうした弾圧の積み重ねの果てに、国家、国民に破滅的な惨禍がもたらされたのは誰もが知るところです。憲法第23条「学問の自由」は、この過ちを決して繰り返さないために、国家と国民のあいだにかわされた約束です。
今回の任命拒否により、この「学問の自由」が激しく揺さぶられています。私たち東京都立大学労働組合は、今回の任命拒否について菅義偉首相と菅内閣に抗議します。あわせて、任命拒否にいたった経緯を説明するとともに、6人を任命するよう、菅首相に求めます。